もしも「トランプ米大統領」が復活したら…2024年米大統領選は、ウクライナ情勢、そして世界を左右する

治安 太郎 治安 太郎

来年の秋に米国では大統領選挙が実施され、おそらく来年の今頃は新たな新大統領が決まり、良くも悪くも米国は盛り上がっていることだろう。しかし、2016年の時もそうだったかも知れないが、来年の米国大統領選挙は単なる選挙ではない。磁石で言えばN極S極のどちらかを決める戦いなのだ。

これまでのところ、来年11月の大統領選挙は現職のバイデンと前大統領のトランプの決戦となることが濃厚だ。前回の高齢者同士の戦いはバイデン勝利に終わったが、来年の選挙でバイデンが勝てるかは分からない。4年が経過しても、共和党支持者の間でトランプ人気は健在で、トランプが再びホワイトハウスに戻るシナリオも十分に考えられる。

仮にバイデンが勝てば、基本的には、これまでの4年がさらに4年続くことになる。対中国では協調できる分野では協調するものの、台湾や人権、半導体など基本的には対立と競争を続けることになり、最大限ウクライナを軍事的に支援し、中東では難しい舵取りとなるがイスラエル支持の姿勢を続けることになろう。

しかし、問題なのはトランプが大統領に返り咲いたケースだ。トランプアメリカの再来となれば、これまでの4年間の米国は否定されることになり、諸外国は混乱し、世界の分断はいっそう進むことになろう。

特に、ウクライナ情勢は大きく変わる。既に米国内でもウクライナ支援疲れが広がっているが、米国の実利的利益にならないことを軽視するトランプ政権となれば、ウクライナ支援は停止されるだろう。

バイデン政権はウクライナ戦争を民主主義(欧米)と権威主義(ロシアや中国)との戦いと捉え、ウクライナ侵攻を成功させれば、権威主義国家ロシアはさらなる現状変更(他国への威嚇や侵攻など)を試みる恐れがあるとし、ウクライナへの軍事支援を続ける。しかし、それは理念や価値観を重視するバイデン政権だから続けることであり、外交を商取引と捉えるトランプ政権がバイデン政権の姿勢を貫くことは考えにくい。

トランプからすれば、ウクライナ支援で米国に具体的な利益があるのかといったところで、実際トランプは今年3月、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止すると言及している。

そして、それに伴って米国と欧州の関係は再び悪化するだろう。ウクライナ支援は米国が主導して行ってきたものであり、それを米国が一方的に放棄すれば、欧州諸国の米国への不信感が拡大し、ロシアと距離的に近い東欧諸国のロシアへの安全保障上の懸念はいっそう強まるだろう。

一方、来年3月にロシア大統領選挙を控えるプーチンは、秋の選挙でトランプが勝利することを強く望んでいる。相性として、バイデンと比べトランプとプーチンの関係はそれほど悪くなく、自国第一主義を貫き、利益にならない諸外国の問題に興味がないという点で両者は共通する。

秋の大統領選挙を迎える米国は、これからよりいっそう内向きとなる。既にウクライナ支援は米国民から支持されるものではなくなっており、バイデン政権も難しい立ち位置にある。プーチンとしては、ウクライナ軍の攻勢に陰りが見えるなか、来年の大統領選挙での勝利とともに軍事的攻勢をいっそう仕掛け、トランプアメリカとの関係構築を目指していることだろう。

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