ももちゃん(3歳・オス)はチワワとトイプードルのミックス犬。繁殖業者のところにいて卸売業者に販売する予定になっていた。母犬とごはんの取り合いになったようで、ごはんも水も自分からは一切口にしなくなってしまったという。
それから少しの間は繁殖業者がシリンジで給餌や給水をしていて、回復すれば販売しようと思っていたようだが、手間が大変だから引き取って欲しい保護団体に言ってきた。その時、ももちゃんは生後3ヶ月になっていた。
一旦は預かりボランティアが決まったが、うまく給餌できず、さらに衰弱してしまったももちゃん。かなり危険な状態で保護団体さんにやって来たそうだ。
頭から離れない子犬
後にももちゃんの里親になった栃木県在住のそらさん宅には、気難しい先住犬がいて、後輩犬を迎えるつもりはなかったという。
「でも、私の母が、夫婦2人になった時に軽度の認知症になって、父が犬を飼った方が母の心にいいのではないか、犬を飼いたいと言ったのです。もちろん、両親が世話するのが難しくなった時には、私が引き取ろうとこの時点で覚悟していました。その頃コロナのペットブームでとても金額が高くなっていて、お話を聞いたブリーダーさんから、保健所か保護団体さんに相談してみては?と言われたのです」
そらさんは、ペットのおうちやジモティーなどを見て、初めて保護犬ってそんなにたくさんいるんだと気づいた。
「その頃はまだ、テレビでもあまり保護犬のことを取り上げていなくて、まだ現状を知りませんでした。正直、一部のお金に余裕のある方が保護犬・保護猫を受け入れているというイメージがありました。でも、そうじゃないって分かって、一生面倒を見る覚悟があるのだから、新たに犬を飼うならば保護犬を受け入れようと思いました」
結局、お母さんの認知症は急激に進んでしまい、とてもじゃないが犬を飼える状態ではなくなった。しかし、そらさんは、保護団体さんのブログをずっと見ていた。
「2020年10月にももを見つけ、ももの状態や少しづつ回復していく姿を見て、この子に幸せになって欲しいと強く思いました。それに、ブログに載っていたももの目が頭から離れなかったので、保護団体さんに連絡を取りました」
もっともっと幸せにしたい
12月、ついにももちゃんがやってきた。栃木から兵庫まで車で迎えにいく予定だったが、飛行機の方がももちゃんの負担が少ないという提案があり、航空便で送ってもらうことになった。
「羽田空港に引き取りに行くと、クレートの隙間から目があった途端に尻尾をぶんぶん振ってくれました。手続きが終わって車に戻ってすぐにクレートを開けたら、尻尾を振ってくーんくーんと甘えて、抱っこしてって言ってきて、本当に安心しました。この時、ももは生後5ヶ月でしたが、極度の栄養失調だったので毛がほとんど抜けてしまい、ぽやぽや生えて来たかなって感じでした。なので、初めて直接対面した時は、ほんと情けない顔をしていましたが、全力で私達に甘えてくれました」
最初は先住犬に吠えられて尻尾をしまっていたが、すぐに見切っておちょくるような態度をしたり、先住犬が吠えるのをチキンレース的に楽しんだり、怖いもの知らずなところがある。ただ、頭の上に手を持っていくと怖がったり、ペットボトルが怖くて近づけなかったり、特定のものに対してはかなり怯えていた。
ももちゃんを迎えて一番変わったのは、先住犬の小太郎じぃちゃんだった。
「受け入れるまでに何年もかかる覚悟をしてももを迎えましたが、3ヶ月後にはしぶしぶな感じでしたが、ももがそばに来て寝ても大丈夫になりました。1年後には小太郎からももが寝ているところに行って一緒に寝ていました。」
ももちゃんがいることで、頑張れているというそらさん。
「小太郎が2月に虹の橋を渡った時に、ももがいなかったらもうわんこを飼えなくなっていたかもしれません。小太郎ロスで、ももも少し不安定な時期がありましたが、旦那さんとももと一緒に乗り越えることができました。ももはどこのお家に行っても幸せになれたと思います。今でも特に裕福ではないうちに来るよりも他のお家に行った方が幸せだったかもと思ったりもします。ももにもっともっと幸せになって欲しい。そう思って毎日ももと一緒にいます」