モデル出身の女優、中条あやみ。ビールのCMなどでもおなじみだ。
「~条」という名字は、「中条」以外にも「北条」「南条」のように方角が付くものや、「一条」「九条」のように漢数字がつくものなどたくさんある。この「条」はかつての条里制に因むものが多い。
条里制は古代の土地区画制度である。
奈良時代の班田収授法は6歳以上の男女に農地が与えられ、死後はそれを返還するという制度だったため、朝廷が農地を管理する必要がある。そこで生まれたのが条里制で、農地を碁盤の目状に区画して管理した。
一つの区画は長さ1町(約109m)の正方形で、これを「坪」という。そして、縦横6区画の計36坪で1単位となり、その東西の列を「条」、南北の列を「里」という。そして、それぞれの土地を、端から「○条△里□坪」と読んで管理した。
やがてこれらの地名は固有名詞化し、各地に「条」「里」「坪」のつく地名が生まれた。なかでも「条」のつく地名は多く、現在でも新潟県の三条市や奈良県の五條市、愛媛県の西条市など、全国に「~条」という地名が残っている。そして、こうした「条」地名に住んでいた人が名乗ったのが「~条」という名字である。
つまり、「中条」とは条里制のあった地域の、真ん中の条に由来する名字である。
因みに、平安京や平城京などの都では条坊制といった。こちらも東西が「条」で、南北が「坊」である。今でも京都の通りには「~条通」という名称が残っている。公家に多い「~条」という名字は、こうした京都の「~条」に由来している。
ところで、中条あやみの名字は「なかじょう」と読む。しかし、かつてテレビドラマなどで活躍した俳優の中条静夫は「ちゅうじょう」だった。この違いは何だろうか。結論から言うと、意味的な違いはない。両方とも「真ん中の条」に因むもので、「中」をどう読んだか、という違いにすぎない。
東北ではほぼ「なかじょう」と読み、愛知県と香川県では「ちゅうじょう」が圧倒的多数。そして、それ以外の地域では「なかじょう」「ちゅうじょう」に分かれている。全国を合計するとほぼ半分ずつで、やや「なかじょう」の方が多い。
なお、「~条」は「~條」と書くことも多い。この「條」は「条」の旧字体で、こちらも意味的な違いはない。