遠足児童がヤマアラシに投石!? 非難殺到、予防策求める声も多く…それでも飼育員の願いは「相手を思いやる気持ち、動物園で学んでほしい」

茶良野 くま子 茶良野 くま子

 

「酷いことが起こりました ヤマアラシに石を投げた子供がいたんです…」

神戸市立王子動物園で、遠足の児童がアフリカタテガミヤマアラシに石を数個投げつけるという出来事があり、直後の騒動を目撃した来園者のSNS投稿が話題となりました。

「 先生がちゃんと指導を」
「施設に問題は?」
「 禁止看板を掲示して」

と、引率者の責任を問う声、園の管理強化を望む意見もありました。何があったのか。そして今後の対策は? 動物園に取材しました。 

 

アフリカタテガミヤマアラシは齧歯(げっし) 目の動物で、鋭く硬いトゲがあるのが特徴。同園ではオスのジョウ(2014年6月25日生)、メスのムム(2005年6月6日生)を飼育。展示場は、観覧側とは手すりで隔てられたオープンな造りです。

 

 

11月16日昼、遠足団体で賑わう中、来園者が園事務所へ駆け込みました。ヤマアラシに石を投げた小学生の男の子がいたので注意したのですが、投げた本人は立ち去ったというのです。

当日の飼育担当者と獣医、事務所職員が急行。2頭の無事を確認しました。ほかの動物にも同じことをするかもしれないと、すぐに園内放送で注意を促しました。飼育担当の若林亮介さんに話を聞きました。

―石を投げるなんて…

「当たったかどうかは分かりませんが、ケガはなく、行動にも異常はありませんでした。起きてほしいとか、トゲを広げるのが見たかったのかもしれません」

 

―よくあること?

「石が落ちていたり、わざと大声を出す人はいます。飼育員が展示場側にいる時にする人はいないので、悪いことだと分かってやっていると思います」

 

―施設を改修すべきとの声も

「最近の動物園では柵がない展示の方が主流です。うちは古い展示場ですが、物が投げ込まれないようガラス張りにしたら空気がこもってしまいます。網で遮ったら、動物側から見える世界が網だけになります」

 

 ―「〇〇禁止」の掲示を増やしたら?

「ご意見もいただきますが、動物よりも『〇〇禁止』 が目立つ動物園ってどうなんでしょう。『見えないルール』というのが動物園にはあると思うんです。動物に物を投げてはいけない、ガラスを叩いてはいけないのは当たり前のこと。人間同士と同じで、相手の気持ちを思いやっていただければと思います。動物園は生き物や環境について学ぶ場であり、子どもたちにとって情操教育の場でもあります」

 

動物園の動物は、見たいと思う姿を都合よく見せてくれるわけではありません。「今、動物がしている行動が何のためなのか想像しながら観察したら楽しいと思います」と若林さん。

「全身にトゲを持つジョウとムムはお互いを傷つけないよう思いやりながら、いつも一緒にいます。トゲを擦る音、木をかじる音、 地団太を踏む音が聞こえるのは、オープンな造りだからこそ。模様もよく見えると思います。トゲは3万本あると言われているので、じっとしている時に数えてみては?」 と話してくれました。

同園では以前から遠足団体に対して、下見や当日の入園時、園内での注意点をまとめた印刷物を引率者に配布しています。新たに始まった園内放送では、「物を投げないで」「 引率者は児童生徒へ周知を」と呼びかけています。

さらに公式サイトに11月30日、「王子動物園からのお願い」を掲載。動物に対してとても危険で悲しい出来事があったと報告。動物たちを守るため子どもたちに伝えてほしいと、遠足の引率者や保護者へお願いしています。

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