「ボランティアなら引き取れよ」「引き取らないなら保健所に持っていく」 犬猫の保護団体スタッフへの言葉はむき出しのエゴ 

松田 義人 松田 義人

福岡県を拠点に、行き場を失った犬猫を保護し、幸せへと繋ぐ活動をするボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)。保護の領域は実に多岐にわたり、動物愛護センターからの引き出し、多頭飼育崩壊現場や繁殖場からの保護などのほかに、一般からの保護要請が入ることも少なくありません。

2023年秋、はぴねすにある連絡が入りました。「自宅のガレージに野良猫が子猫を産んでいる。早く引取りに来てほしい。引取りに来ないなら、子猫は川に流すぞ 」という過激な内容。このような連絡がくることは、実は結構多いのです。

自らの意思でワンコを飼い始めた家族から「子供達が結婚をして家を出て、世話をできなくなったから引き取ってほしい」という連絡もよくあります。こういった依頼要請の際によく言われるのは、「ボランティアをやってるんだから、引き取れるでしょ」というセリフです。

「引き取れないなら保健所しかないよ?」

はぴねすは、1匹でも多くの命を救い幸せへとつなぎたいという気持ちで活動しています。その活動はボランティア、つまり非営利です。いつどんな状況でも保護できるわけではなく、たとえばキャパシティやそのときどきの事情で、受け入れることができないこともあります。すると「引き取れないなら保健所しかないよ?」と脅迫めいた言葉を口にする人もいます。

「1匹でも多くの命を救いたい」と思う一方、その活動には限界があり、そして常に限界ギリギリまたはそれを超えたところで活動を続けており、このような言葉をぶるけられると、スタッフはとてももどかしい思いになります。

要請をしてくれた人の気持ちはよくわかります。だからといって全ての犬猫の命を必ず救ってあげられるのかと聞かれれば、それはできないと答えざるを得ません。できることは、今自分たちが精一杯できることをやり、その積み重ねで多くの人たちに、犬猫の命の尊さが伝われば、結果的に救われる命が1匹でも多く増えるのではないか……スタッフは「これが本当に正しいことなのかはわからない」としながらも、「まずは今の自分にできること」を模索しながら活動を続けています。

保護活動の実現は「人ありき」

冒頭で触れた保護要請の際によく言われる「誤解」は、もしかしたら、保護団体の活動の実態や大変さ、そして各団体の真の思いが社会に伝わっておらず議論も乏しいことから生じるのかもしれません。

はぴねすのような保護チームや個人は、全国各地にいます。各団体・個人とも考え方は様々である一方、中には垣根を超えて団体同士が連携し、犬猫の命を共同で救う活動をする場合もあります。

2023年、はぴねすの元に個人で保護ボランティアをする仲間から相談がありました。繁殖場にいる皮膚病を患ったワンコの保護を手伝ってもらえないかというもの。もちろん、こういった依頼でもそのときどきによって対応できない場合もありますが、同じ保護活動を行う者同士の場合は、お互いの事情を理解しており、連携する場合も、どうしても対応できない場合も理解しあえることが多いとも言います。

スタッフは、これらの話を踏まえて「保護活動は、単に犬猫に向き合うだけでなく、まず人ありきだ」と言います。

犬猫を悲惨な状況に追い込むのも人間、そしてそれを救うか救わないかを判断するのも人間、保護する際、あるいは新しい里親さんへと譲渡するかしないかもまた人間同士の信頼にあり、まずはこの「人同士」の連携がなければ、保護活動は成立しないとも語ってくれました。

「まずは今の自分にできること」を

人同士の連携がうまくいった際には、行き場を失った犬猫の命のサポートができるとも教えてくれました。実際、はぴねすでは一般からの要請でも心ある人たちの連携によって小さな命を救ってきた例、そして保護団体や個人の活動家の連携によって幸せへと導くことができた例は無数にあります。あるいは、保護した犬猫を温かく迎え入れてくれる里親希望者さんの思いも同様で、いずれも「まずは、今の自分にできること」をすることが大切だとも言います。

個人個人が「できること」を実践することで、行き場を失った犬猫の思いを汲み取ることができるでしょうし、そういった実例や思いが社会に広まることで、結果的に犬猫と人間が仲良く暮らしていけるようにも思いました。

犬猫の保護にかかわる全ては、まず人ありき。

だからこそ、まずは自分にできることをやり、そのことで命を繋いでいきたい……そんな思いのもと、はぴねすは今日も活動を続けています。

わんにゃんレスキューはぴねす
http://happines-rescue.com/

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