広島県の動物愛護センターから助け出された保護犬・ゾンテ。広島県のシェルターを経て、保護団体の岡山の施設に入った後、最終的には東京まで移動することになりました。その距離800キロ。保護当初は生まれて数カ月の子犬で、とにかくビビリだったゾンテにとっては大冒険ともいうべきものですが、その結果運命の里親さんと出会い、幸せを掴むことができました。
ガクブル続きだが、次第に本来の明るい性格が見え隠れ
ゾンテを保護したのは、保護犬の譲渡活動を行なっているピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。出会ったばかりのゾンテは怯えている様子で、スタッフが「大丈夫だよ」と言ってもとにかくガクブル。岡山にあるピースワンコの施設に来てからもなかなか心を開いてくれませんでしたが、一週間ほどすると、スタッフの手からご飯を食べられるようになり、次第に元来の明るい性格が出てくるようになりました。
「ゾンテって、本当はこんな子だったの?」と、スタッフも驚くほどでしたが、しかし、その明るく元気な様子を見せてくれるのは慣れた人の前だけ。臆病な性格には変わりがないため、散歩に連れていっても、しばらくの間は道行く人や車にも怯えることもありました。
このため、様々なトレーニングに挑戦するなどし、保護以前とは違う、幸せな第二の犬生を目指していました。
縁につながらなかったゾンテ。数百キロ先の東京へ
ゾンテは身体的な難点はなく、前述のような極度のビビリがある程度。いたって明るいワンコなのですが、しかし新しい里親さんはなかなか見つかりませんでした。結果的にゾンテより後から団体に入ってきたワンコが先に卒業していくことも多く、そのたびにスタッフは複雑な気持ちになったと言います。
そんな経緯があったため、「縁がないなら、ありそうなところに行けばいい」と考えたスタッフは、ゾンテを岡山から数百キロ離れた東京・あきる野の譲渡センターへ送り出すことにしました。ここまで長くゾンテと付き合ってきたスタッフですので少々寂しく思う気持ちもありましたが、「次の幸せを掴むのはゾンテの番だよ。がんばってね!」というエールとともに送り出しました。
対面する前からゾンテのアルバムを作っていた女性
数百キロもの移動中、やはり不安そうな表情を浮かべるゾンテでしたが、なんとか無事にピースワンコの東京あきる野譲渡センターに到着。しかし、またも知らない環境、知らない人たちを前に緊張するゾンテでした。少々かわいそうにも思うスタッフでしたが、それもこれもゾンテを迎え入れてくれる里親さんを見つけるため。これを第一の目標としながらも、不安そうなゾンテには、優しく接し続けるしかありません。
ある日、一人の女性が施設を訪ねてきました。ホームページでゾンテを見て一目惚れし、里親になりたいと思っていたとのこと。ただし、当初ゾンテは岡山にいたため、「会いに行くのは難しいだろう」と半ば諦めていたと言います。でも、ゾンテのことが忘れられず、ずっと団体が配信する情報をチェックしていたところ、東京にゾンテがやってくることを知り、女性は驚いたそうです。
「ゾンテとの不思議な運命」を感じた女性は、ゾンテが東京に来ることが決まってから、すぐに東京の施設を訪ねゾンテに関する質問などをしていました。さらに、インスタなどのSNSでゾンテの写真を集め、スマートフォンに自作のアルバムも作成。ゾンテがこれまでにたどった道のりがわかるようにしていました。それほどに「ゾンテ・ラブ」な女性でした。
800キロの移動をもたらしたのは、女性との強い縁?
女性と対面した際、やはりゾンテは想像以上に震えました。しかし、女性は「今はそのままでいいんだよ。全部受け入れてあげるからね。私たちの家族になってくれたら、絶対に幸せにするからね」と言いました。
果たしてゾンテは、この女性の家庭に迎え入れられることとなり、見事幸せな第2の犬生を掴むことになりました。今になって思えば、ゾンテが800キロもの距離を巡ることになったのは、女性との強い縁が呼んだものだったのかもしれません。
岡山時代、ゾンテのケアをしていたスタッフは、見事卒業となったゾンテ、そして里親さんの女性に対し、最後にメッセージを送りました。
「ゾンテ卒業おめでとう! 怖がりでまだまだお子ちゃまなゾンテを、どうぞよろしくお願いします」
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/