数カ月待ちの予約困難店 東京・築地の老舗に外国人観光客が殺到する理由

松田 義人 松田 義人

東京・築地にある寿司店『築地玉寿司』。

2024年で創業100周年の江戸前寿司の老舗は、気取らず寿司を楽しんでもらう取り組みを続けてきた店でもあり、曖昧だった寿司の値付けに対し明朗会計を取り入れたり、ソフトクリームをヒントに、いわゆる「手巻き寿司」を考案するなど、業界をリードしてきた名店として長きにわたって親しまれています。

この『築地玉寿司』では、数年前から「客自身が、本物の寿司職人さながらの白衣姿でカウンターに立ち、自分で寿司を握り自分で食べる」という斬新なサービス「寿司にぎり体験」というものを実施しています。

それは面白そうだ、と筆者も実際に『築地玉寿司』でこの「寿司にぎり体験」にトライしてみることにしました。

優しい板前・金子さんがコーチに

複数ある『築地玉寿司』のうち、「寿司にぎり体験」を実施するのは晴海通り店および「本店上ル」というお店で行っています。晴海通り店では2つのコースが用意されており、それぞれ内容が異なります。プレミアムコース(1万5千円)、スタンダードコース(1万円)となっていますが、いずれも体験時間は約90分です。

筆者はこのうち、プレミアムコースをチョイスしました。

まず、寿司のなんたるかと技術をコーチしてくれる『築地玉寿司』のプロの板前・金子光広さん(以下、金子さん)にご挨拶。言うに及ばず厳しい職人の世界なので、怖そうな人だったらどうしようと少々ビビっていた筆者ですが、金子さんは筆者と同世代の優しそうな方だったのでホッとしました。この「寿司にぎり体験」にはいくつかのフローがあるのですが、まずは金子さんの「プロの魚捌き見学」から始まりました。

金子さんは無駄なく、そして気持ち良いほどにスーッと魚に包丁を入れていきました。魚に詳しくないと、寿司のネタがどのような部位から取られるものなのかがイマイチ想像できませんが、金子さんが手早く綺麗におろす魚の身から、どのような部位がネタに使われるかがよくわかりました。

何回やってもうまくできない「にぎり」

次にいよいよ自分で挑戦する「にぎり体験」、つまりシャリ作りのトライです。にぎり寿司のシャリは強く握りすぎてもダメ、弱すぎてもダメという実に難しいものですが、金子さんによれば、うまく握るコツは以下の三手と言います。

(1)  右手で小さくシャリを団子状に丸める

(2)  (1)に左手を添え、俵状に優しくまとめる(シャリは右手に握ったまま)

(3)  左手でネタを取り、右手の人差し指で取ったわさびをネタにつけ、シャリとネタを合わせて完成

この工程を聞き、やや複雑に思いながらも「自分にもできるかも!」と軽く思ったのですが、これが見るのと実際にやるのとでは大違い。金子さんがわずか数秒でを素早く握っていく横で、筆者は何個作ってもうまく握れません。焦る筆者でしたが、金子さんは「大丈夫ですよ。みんなこんな感じですから、慌てずにやってみてください」と、優しく指導してくれました。

手際良いプロの技を前に息を飲むばかり

何個か握った後に、やっとにぎり寿司らしくなったところで、次のフローに入りました。

ここからは主に金子さんのプロの技の見学がメインで、『築地玉寿司』の名物でもある手巻き寿司のコツを教わる「職人の巻いた手巻き(ハンドロール)」、本わさびを摺り味見をする「本わさび味わい体験」、素早く綺麗な玉子焼きを完成させる「寿司屋の本格玉子焼きショー」と続きます。

普段はなかなか見ることができない神技を前に、ただただ息をのむばかりでしたが、金子さんの手際の良さと完成度の高さに感動しました。

「自分で握った寿司を、自分で食べる」

そして「自分で握った寿司」「プロの金子さんが握った寿司」とを実際に食べて比べる「寿司の食べ比べ」をしました。

シャリの握り具合・カタチの違いにショックを覚える筆者でしたが、それよりも貴重な体験ができたことが何よりうれしく思いました。

そして「自分で握った寿司」をメインとする「お食事」をいただいた後、一番最後に「認定証授与」と「浮世絵コースター」のお土産をいただき、コースが終了しました。

外国人観光客の中には、体験途中で泣き出す人も

斬新なサービスである一方、実に楽しい『築地玉寿司』の「寿司にぎり体験」でしたが、現在は予約が殺到し、数カ月待ちといいます。『築地玉寿司』の太田佳子さんに話します。

「『寿司にぎり体験』は当店だけでなく、築地界隈で複数の寿司店で実施していました。しかし、コロナ禍を経て当店以外の寿司店の大半がサービス中止になりました。そんな中でも当店では、多くの方に寿司の楽しさを知っていただきたく、『寿司にぎり体験』を継続し、現在は主に外国人観光客の方々のご利用を多くいただいています」

日本人の方にも多くご利用いただきたいと思っていますが、現時点では連日外国人観光客の方々の予約で埋まってしまっており、早くてもご予約をお受けできるのが数カ月先となっています。この点、申し訳なく思っておりますが、ご興味をいただき『体験してみたい』と思ってくださった方は、先々のご予定と照らし合わせて、ご予約のお問い合わせをいただければ幸いです」

築地玉寿司
https://www.tamasushi.co.jp/

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