田舎暮らしの実像がSNS上で大きな注目を集めている。
「山奥ニート10年やって思ったこと
・人間関係が平和すぎると、些細なことが気になり始める
・賃金労働から解放されても広義の『仕事』は発生する
・すべてのことは、無理にやらされると嫌で、自分で納得してやると楽しい。自分が納得するためならどんな大きなコストでも払う価値がある」
と投稿したのは作家の葉梨はじめさん(@banashi)。
和歌山県の限界集落の廃校舎で仲間と共同生活を営んでいる葉梨さん。住めば都と言うが、その逆だってある。都会の喧騒をはなれた山奥の生活にもやはり種々のストレスは付きまとうものなのだろうか。
今回の投稿に対し、SNSユーザー達からは
「『人間関係が平和すぎると、些細なことが気になり始める』これはほんと田舎あるあるですね。」
「山籠りしなくても普通に生活してたら悟ると思うんだコレ 特に社会人で2つ目と3つ目に気付かない人は余程恵まれた環境にいるのか感覚麻痺しとるよ 2なんて学生でも自炊するだけでわかる事」
「自分が好きで田舎に住んでる人と結婚とか家族の問題を機に田舎にすまざるを得なくて住んでる人との差は3つ目だろうな」
など数々の共感の声や意見が寄せられている。
投稿した作家に聞いた
葉梨さんに話を聞いた。
ーー現在の生活を始めたきっかけを。
葉梨:大学生活で友達もできないし、アルバイトも上手くいかない。社会が自分を必要としないなら、自分で自分の社会を作ってやると思い山奥へ引っ越しました。今は山奥の廃校舎を使わせてもらっていて、10人程度の共同生活をしています。
ーー気になる「些細なこと」には例えばどのようなことがあるでしょうか?
葉梨:炊飯器のお米を食べ終わったのに新しく炊かない、生ゴミが溜まっているのに捨てない、大掃除に参加しないなどです。山奥での10年の共同生活の間には、人間関係が悪くなって息苦しい時期が何度かありました。そういう時は、刺すか刺されるかのような気持ちの時は、こういう細かい部分はあまり気にならないのです。
ーー元の生活では「無理にやらされる」ことは多く存在していたのでしょうか?
葉梨:同じ朝早く起きるのでも、山奥に住む前、例えばアルバイトに行く時などは仕方なくイヤイヤ起きるという感じでした。山奥での生活でも、清掃活動など早起きしなければならない時がたまにあります。そういう時は自分でこの場所で生きることを選んだのだから、税金のようなものだと納得できています。
ーー現在の生活に感じておられるメリット、デメリットを。
葉梨:近くに飲食店がないので、ちょっとどこかに食べに行こうか、などということができません。でも外食をしないので、節約になるのはメリットですね。
ーー投稿の反響への感想を。
葉梨:数人の方から、「住みたいので見学に行きたい」というメールをもらいました。今は部屋に空きがあるので、新しい住人が増えたらいいです。
◇ ◇
今回の話題を提供してくれた葉梨さんは現在、以前出版した著者「山奥ニートやってます。」の漫画版を雑誌「家の光」で連載中。現代において遁世とはなんぞや。ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。
葉梨はじめさんプロフィール
1988年生まれ、名古屋市出身。自称「山奥ニート」。浪人・留年・中退の親不孝三重奏でひきこもり。2014年から和歌山県の山奥に移住。NPOの支援を受けるはずが移住3日後に代表が亡くなり、理事として自主運営を開始。人口5人の限界集落に建つ木造校舎にネットを通じて集まった男女10数人と暮らしている。2017年に会社員の女性と結婚。現在は単身赴任で山奥ニートしている。著書「山奥ニートやってます。」(光文社)。Xアカウント:https://twitter.com/banashi/