「熊かわいそう」は被害地域住民には通用しない
転落事故や交通外傷など、重傷例を担当する整形外科医でさえ絶句するという「熊外傷」。秋田県では住宅街にもツキノワグマが多数出没しており、通学や通勤、買い物など、日常の外出でさえ危険な状況だという。
にも関わらず、被害地域外から「熊の駆除」への苦情が寄せられていることに対して、「熊外傷」の手術・治療にあたる形成外科医として、ぽっぺん師匠先生はこんな風に話す。
「過去にも異常気象により植生が変動した年はあったはずなのに、今年だけ特殊な状況にある理由については、まだはっきりとは解明されていません。山の斜面を切り拓いた太陽光発電パネルの設置など、人と熊の生息域の境目が変わったことを原因のひとつとしてあげる方もいますが、判然とはしません。イノシシとのエサ争いに負けたのではないかと考える意見もあります。杉を植林した山を、本来の植生である広葉樹林に変えるのは理想的な構想です。しかし、自然回復のための公共事業には多額の予算と時間がかかるうえ、どのような効果があるかは予測不能です。
野生の猛獣が山奥から人の住む領域に出てきて、人的被害が出ているのが今年の状況です。熊を絶滅させることが正しいとは思いませんが、単純に駆除される熊がかわいそうというのは、被害地域の住民には理解されない意見だと思います」(ぽっぺん師匠さん)
「熊」被害は人生を大きく狂わせる
熊に襲われた際の「熊外傷」は、例え命が助かったとしても、複数回の手術や感染症治療、術後の後遺症、顔面損傷による社会的なダメージなど、その後の人生を大きく狂わせるものだということを忘れてはならない。