9月26日、西武鉄道は「サステナ車両」として、小田急電鉄、東急電鉄から計約100両を授受することを発表しました。鉄道ファンの間では大きな話題となっていますが、「サステナ車両」に該当しそうな関西大手私鉄の車両は何でしょうか。
そもそも「サステナ車両」とは
そもそも、「サステナ車両」という用語は西武鉄道がつくった造語で、「他社から授受したVVVFインバータ制御車両(VVVF車)」という意味です。
VVVFインバータ制御とは直流電気から任意の周波数・電圧の交流電気に変換し、交流モーターを動かす装置です。
昔から電車は直流モーターを用いていました。直流モーターは電圧を上げることで、電車を加速させます。
しかし、直流モーターにはいくつか欠点が存在します。まず、直流モーターは消耗品があり、メンテナンスに手間を要します。
次に、モーターにかかる電気をコントロールするために抵抗制御が用いられますが、余分な熱の発生がネックでした。
一方、交流モーターなら、消耗品がないためメンテナンスが楽。また、抵抗制御いらずなので、エネルギー効率が高まり、熱も発生しません。
VVVFインバータ制御を通じて回生ブレーキも利用できます。回生ブレーキは電気を用い、ブレーキした際に発生する余った電気を架線に返します。いわば、電気の再利用ができ、大変エコなブレーキです。
西武では非VVVF車がまだまだ活躍を続け、その多くが1980年代後半〜1990年代前半にデビューしました。
そこで、小田急・東急からVVVF車を導入することで、2030年度までに全車両のVVVF化100%を目指します。
西武によりますと、全車両のVVVF化100%が達成した暁には、年間約5700トンのCO2削減。並びに車両をリユースすることにより、新車製造・車両廃棄時に発生するCO2も削減できるとのことです。
西武が授受する車両は小田急8000形、東急9000系です。小田急8000形は国分寺線、東急9000系は多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線で活躍する予定です。
「サステナ車両」は2024年度から2029年度かけにかけて順次導入します。2024年度に運行開始する第一編成は小田急8000形、東急9000系の導入は2025年度以降になる予定です。
サステナ車両、関西大手私鉄で例えると
「サステナ車両」に指定された小田急8000形、東急9000系を関西大手私鉄で例えると、どの車両になるのでしょうか。
小田急8000形は1982年にデビュー。もともとはVVVF車ではありませんでしたが、2000年代半ばから順次VVVF化されました。長年にわたり小田急通勤車の顔として活躍。廃車が進む一方、白色に青帯という昭和の小田急カラーで最後の活躍をしています。
東急9000系は東急初の量産型VVVF車として、1986年にデビュー。東横線の顔として、2004年には元町・中華街駅への乗り入れを果たしています。現在は廃車が進み、東横線からは撤退。5両化された上で、大井町線で活躍しています。
関西大手私鉄ですと、1989年デビューのVVVF車、阪急8000系が思い浮かびます。前面デザインも変え、阪急創立80周年という記念年にデビューしたこともあり、阪急新時代の到来を予感させる車両でした。現在も1両の廃車もなく、神戸本線・宝塚本線で主力級の活躍を続けています。
他には1989年デビューの京阪7000系が挙げられます。7000系も当初からVVVF車で、前面デザインも変更されました。28両という少数にとどまりましたが、現在も1両も欠けることなく活躍しています。
また、1984年製造、1986年デビューの近鉄7000系もVVVF車です。こちらは近鉄初の第三軌条の車両ということもあり、デザインを一新。1986年開業の東大阪線(現けいはんな線)から大阪市営地下鉄(現大阪メトロ)中央線に乗り入れています。7000系も後輩車両は登場しましたが、廃車は発生していません。
このように、「サステナ車両」を軸に見ていくと、関東大手私鉄と関西大手私鉄で車両の交代サイクルに違いがあることがよくわかります。将来的に関西大手私鉄でも西武のように「サステナ車両」導入はあるのでしょうか。