普段お世話になっている先生方に、なにかお礼をするべきなのでは?と思っている保護者の方もいるのではないでしょうか。公立の学校では禁止されている心付けですが、私立の学校では特に規定がない場合もあるようです。
個人面談に菓子折り?
私立中学に通う息子(1年生)の個人面談のため、学校を訪れたRさん(40代)。学校に到着し教室を探していると、他の保護者とすれ違いました。その時、その保護者が某有名和菓子店の紙袋を手にしているのに気が付きました。その方は違う階に移動されたので、別学年の保護者なのでしょう。
その時はお菓子の袋を持っている意味が理解できませんでしたが、後にRさんはその意味を知りました。面談の順番が回ってきて部屋に入室すると、先生の傍らに紙袋が置かれていたのです。それは決して教材や資料が入っているような風体ではなく、少し良さそうなお菓子の箱が入っていそうな綺麗な紙袋でした。ちらりと目をやると案の定、包装紙に包まれた箱が入っていました。
その時、すれ違った保護者が持っていたお菓子の紙袋の意味に気づき、Rさんは動揺してしまいました。
「もしかして、私立の学校だと面談で菓子折りを用意するのが普通なの…?」
不安にかられながらも、面談は終了。帰り際、ほかの保護者の手荷物をつい気にして見てしまいます。しかし、最初にすれ違った保護者以外は、特にそういったものを持っている様子はありません。ほっと胸を撫で下ろすRさんでしたが、一方で先生のそばに置かれた紙袋の存在が気になります。
私立学校は先生に手土産を渡すものなの?
別の知り合いのMさん(50代)も、娘さんが私立中学に通っていたころに似たような場面に遭遇したそうです。その学校では、面談する先生の後ろに、受け取った手土産をまとめておくための段ボール箱が用意されていたそうです。それを見たMさんも、その後は菓子折りなどを渡すようになったと言います。
Mさんの娘は10年ほど前にその中学を卒業しています。その頃にはすでに、教員への付け届けは一般的ではありませんでした。しかし、Mさんは、普段娘がお世話になっていることへの感謝と、周囲に合わせて行っていたといいます。
「賄賂になるから公立の先生はダメだというのは知っていますが、通っていたのは私立でしたので。当時の先生は受け取ってくれましたし、特に禁止とも言われていませんでした」
学校の先生に心付けを渡すべき?
今回のエピソードに関して心付けを考えたことがある保護者に聞いてみると、「受け取ってもらえなかった」「面前では受け取ってもらえないので郵送した」「先生側の迷惑になるからやらなかった」など様々な意見がみられました。
この件に関して、元航空機の客室乗務員(CA)でマナーアドバイザー、アンガーマネジメントファシリテーターとして活躍されている浪越あゆみさんにご意見を伺いました。
――「やはり先生に心付けは必要なのでしょうか?
この件に関しては、正解不正解という答えを出すことは難しいと思います。答えは学校によって違いがあるところが、保護者の方を迷わせてしまう要因の1つでもあると思います。
保護者の方が迷っているということを学校が把握することで保護者の迷いを減らすことができると思います。学校としてそのようなお菓子の受け取りがOKなのかNGなのかを明確に入学式の際に明記することで保護者の迷いを解決することに繋がると思います。その辺りが曖昧だと、今後も保護者の方の迷いを減らすことは難しいと思います。
――今回の場合は私立校で、心付けに関するアナウンスはなかったようです。
公立の学校ではこのような先生への心づけは受け取ることはないと思います。私立の場合は、お菓子に限らず現金が渡されるとの話も聞いたことはあります。しかし、そのやり取りが原因で、先生に迷惑を掛けてしまったり様々な噂が広がるという現実があるようであれば、それは避けておきたいものです。先生に迷惑をかけないためにも事前にお話があるといいですね。
最近では家庭訪問の際に、お菓子はもちろんお茶にも口をつけない先生もいらっしゃいます。家庭訪問の際の、お茶出しはNGと事前に学校から周知されるケースもあります。
このような問題解決のためにも、学校と保護者の考えのシェアができる時間を作っていけたらいいですね。答えが明確ではない問題だからこそ、両者の話し合いの場が必要になってくるのではないでしょうか?
◆浪越あゆみ(なみこし・あゆみ) マナーアドバイザー・アンガーマネジメントファシリテーター
元日本エアシステム(現日本航空)客室乗務員の経験を活かし、企業や学校、個人に向けたマナー研修の講師などとして活動。四国大学非常勤講師。https://www.instagram.com/ayumi_namikoshi/