木が「もぐもぐ…」と食べているのは!?「ハムスターみたい」「ほっぺが可愛い」…でも「痛そう」

太田 浩子 太田 浩子

 「もぐもぐ…」というつぶやきとともに、X(ツイッター)に2枚の画像が投稿されて話題になりました。

 写真には、直径30センチほどの木の途中が膨らんでいて、「シロダモ(クスノキ科)」と書かれたネームプレートが幹に埋まったようになっている様子が写っています。まるで、頬を膨らませて板を食べているみたい。この写真に、さまざまな感想が書き込まれました。

「成長が早く樹皮の再生力も強いんですね…シロダモすごい…」
「ハムスターみたいな食べ方でかわいいですね😂🐹💕」
「可愛いなー。くぼみのところが目っぽくみえくる!!」
「美味しそうに食べるわねえ…」
「すごいほおばってる笑」
「ほっぺがかわいいですね。自然の力はすごいなぁ✨」

 公園や公道を歩いているときに「あの木は、なんだろう?」という疑問に答えてくれる「樹名板」。木の名前だけでなく、解説がついているものもあります。木に愛着や興味を持ってもらうためにつけられていますが、紐や針金で設置されていたり、管理がされていなかったりすると画像のような状態になってしまうことも。

「樹木名の札はとても役にたつのですが、樹木に負担にならないようにつけなきゃですね。材質も考えて。」
「伸縮性のあるコイルバネとかじゃなく、番線で固定されてるとよく食べられる印象」
「痛そう…。もう少し早く気がついて外してあげてくれていたら。こうなる前に名札を緩くする方法ないのかといつも思う。まあ自然界には他にもいろいろ成長の妨げになるものはあるわけだけど、自然の岩石とかじゃなく、人間がつけた名札でこうなるというのが、ほんとに辛い。」

 画像をポストしたのは「のん🍀365日野草生活®️(@365nitiyasou)」さんです。のんさんは、ほぼ毎日野草に関することをしながら生活している人。多摩川を中心に年に100回の植物観察会を開催するほか、さまざまなメディアで活躍しています。そんなのんさんにお話を聞きました。

──画像のシロダモをご覧になったときはどのように思われたのですか?

 「看板を食べてる!」と思いました。しかし、このような状況は、木からしたら災難かもしれません。取り外すことも難しいですし、木が傷ついてしまいます。

──仕方なく食べちゃってるのですね。

 木が成長するにあたり、ネームプレートと接触して、こすれたところが傷になっていると思います。これ以上傷口が広がらないように、急いで覆いかぶさろうとしたのかなと推測されます。紐がバネのように伸びる素材もあるので、木の成長に合わせて伸びるように工夫していただきたいものです。

──こうなってしまう前にできることもありそうです。のんさんは、会社を辞められて、ほぼ毎日野草に関する生活をされているそうですね。なにかきっかけがあったのですか?

 うさぎと一緒に暮らすようになったのがきっかけです。うさぎ飼育書に「うさぎは野草が好き」と書いてあって、うさぎの好きな野草を探しにいくようになりました。飼い主が野草を覚えることで、流通が止まった災害時にもうさぎのご飯の心配をしなくてもいいですし、リスク管理のため。そして、うさぎは嗜好性が高いので、既製品に限らず、いろいろな食の選択肢を与えることができると思ったためです。

──なるほど。ライオンウサギさん可愛いです。

 野草が関係するかは分かりませんが、キッカケのうさぎは10歳。今も元気に生きています。

──長生きですね! 野草にはどんな魅力が?

 都心でも野草はたくさん生きています。季節を感じにくい都市でも、季節によって観察できる植物が違うので、季節の変化を日々感じる生活でもあります。観察を通して、街を彩る植物の暮らしぶりが明らかになり、単なる緑色の背景だった植物が、それぞれに名前をもつ一個人であり、個性的な隣人として認識できるようになります。「野草を知ることで世界の解像度が上がる」。下を向いて歩くことで、世界が色鮮やかに見えるようになっていきます。

──たった10センチ四方の中にも、たくさんの野草が生えていて、いろいろな世界が見えると解説されていました。身近な場所でも、自然は楽しめるということですね。

 「自然と遊ぼう」と考えて、遠出する人が多いかと思います。マイフィールドの多摩川は都市河川。タワーマンションやビルがある場所でも、自然はあるのです。

 都市部は特に生物が生息するには過酷な環境と言えますが、多摩川には絶滅危惧種も生きています。絶滅危惧種を見つけた場合、まだ残っていたんだと嬉しくなり、テンションが上がります。近年は”在来種の保護”や”生物多様性”という考え方が広まっています。日本の生態系や、貴重な在来種を守ることが大切ですが、知らなければ守ることができません。

 身近な生き物を観察することで、生物多様性保全について考えることができると思っています。

 ◇ ◇

 樹名板がつけられている木には、管理者がいます。樹名板の取り付け方法には種類があり、シュロ縄などのヒモや針金のほか、最近は木の成長に合わせて伸びるコイル状の金属「スプリング」タイプの設置も増えてきました。

 管理者は多くの木を管理していますから、定期的な点検などに手が回らないことも考えられます。ヒモや針金がキツくなると、今回の写真のようにヒモごと樹名板を取り込んでしまったり、食い込んだヒモの部分が弱くなって折れたり枯れてしまう可能性があります。

 そこで、ヒモがきつそうになっていたり、樹名板がハズレかけていたりという状態を見つけたら、その木の管理者に連絡することで傷つく木を減らせます。

 たとえば横浜市公園愛護会「愛護会通信54号」では、「ヒモがキツくなっているのを見かけたら、一度ほどいて結び直してあげてください」と、「本結び」の結び方の説明がされています。連絡すれば交換用のヒモももらえるそうです。

■のんさん
X(ツイッター) https://twitter.com/365nitiyasou
note  https://note.com/365nitiyasou/n/n4f8128a4591a

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