まだあったのか! 大阪の地下鉄ホームで懐かしの百葉箱に遭遇 設置から90年…役割を終えても撤去されない理由 そして中には何が?

黒川 裕生 黒川 裕生

先日大阪の地下鉄を利用した際、ある駅のホームで百葉箱がふと目に留まりました。これまで全く気にしたことはなかったのですが、そういえば昔から当たり前のようにあちこちの駅にあるような…。まさか今も「現役」なのでしょうか? だとしたら何のために? 地下鉄を運営する大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ)に取材しました。

百葉箱は屋外の気温を測るために温度計などの計測機器を入れておく白い木箱のこと。風通しが良くなるように四方が鎧戸(よろいど)になっており、これがちょっと不思議な名前の由来なのだそうです。40代の筆者が小学生の頃は学校に百葉箱が置かれており、理科の授業で仕組みや用途などを教わったような記憶があるのですが、今はどうなのでしょう。

大阪メトロによると、地下鉄の駅のホームに百葉箱が置かれるようになったのは1934(昭和9)年、淀屋橋駅が始まり。ちなみに大阪市営地下鉄1号線(現在の御堂筋線)が開通した翌年のことです。冷房がなかった当時、利用者や電車の運行頻度の増加が、駅構内の温度環境にどう影響するかを把握するのが目的でした。

2023年9月現在は、御堂筋線の梅田駅、淀屋橋駅、天王寺駅、谷町線の天満橋駅、四つ橋線の西梅田駅、千日前線の鶴橋駅、堺筋線の堺筋本町駅、中央線の緑橋駅に1個ずつ、計8個あるそうです。ただし、緑橋駅の百葉箱については、利用者が見られる場所には置かれていないとのこと。

百葉箱の中を見てみよう!

担当者立ち会いの下、箱の中を見せていただけることになりました。

指定されたのは天満橋駅(谷町線)。百葉箱はホームの北端に、しかも太い柱に隠れるように、ひっそりと佇んでいました。

普段は電気管理系を担当しているという男性社員が南京錠を開錠し、おもむろに扉を開くと、中にあったのは100均で売られているような四角いプラスチックのケースがひとつだけ。あれあれ、なんか思ってたのと違うな…とちょっと拍子抜けしつつ、ケースの中身を確認すると、デジタル表示のシンプルな温湿度計が1個入っていました。

ちょっと聞いてみましょう。

—百葉箱としては今も現役なんですね。

「はい。ホームの気温と湿度を記録しています。私たちが電池の交換も兼ねて4カ月に1回ほどのペースでデータをチェックしていますが、データはBluetoothで飛ばせるのでボタンを押すだけ。簡単です」

—そのデータって何かに使われているのでしょうか。

「ほぼ90年分の蓄積があるわけですが、具体的にそれを利用する機会というのは今はありません。とはいえ記録としては貴重なので継続している、というのが実情です」

百葉箱の中には水銀の棒状温度計も取り付けられていましたが、これはもう担当者もほぼ「見ない」そうです。

とうに役割を終えていたこともあり、実は2012年頃に撤去の話が持ち上がり、新聞やテレビでも「順次撤去へ」と報じられました。が、利用者から惜しむ声が多く寄せられたことなどを受け、安全に支障のない範囲で保存することに。ただ、広報担当者は「現在、駅のリニューアル工事を順次進めています。工事後も残すかどうかは決まっておりません」と存続について含みを持たせています。

どうなることやら…。

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