食品工場の近くに住み着いた猫たち 取引先から排除を求められた工場長 70代の夫人がとった優しさと行動力

松田 義人 松田 義人

2022年のこと、ある地方の食品加工会社の工場周辺に多くの外猫たちが住み着いていました。

食品を扱う場所であるがゆえ、衛生上での問題や業務車両の出入り時に起こりうる猫の事故なども心配です。その食品加工会社は取引先から「周辺の猫たちを排除するように」と求められました。

期限は3月31日。ほとんどのメス猫はいつ産んでもおかしくないほど大きなお腹でした。この猫たちを不憫に思った工場長夫人は、猫たちを保護することに決め、地元ボランティアさんの協力のもと、妊娠中の猫を捕獲して病院にて血液検査やエコー、駆虫などの処置を行ったのちに連れ帰り、自宅で世話をすることにしました。

心優しい工場長夫人のもとで保護された猫が出産

心優しい工場長夫人のもと保護された妊娠中の猫たちは、その家で子猫を出産しました。しかし、同時に複数の野良猫が集まれば、感染症リスクも高まります。特に猫は生まれてすぐより、母乳からの免疫が減る生後2カ月を過ぎてからのほうが感染症にかかりやすい、という説もあります。この点、細心の注意をはらって子猫たちのお世話をしていました。

しかし、そのうちの1匹でブラックスモークのメスの子猫、オードリーが猫風邪に感染してしまいました。その治療のため、しばらくオードリーは親猫やきょうだい猫と離れて生活することとなりました。

たまたま出会った月齢の近い2匹が意気投合

同じころ、工場の近所で別の子猫がひとりぼっちで歩いていました。名前はロング。パステル三毛のメスの子猫です。母猫はどこへ行ったのかわかりませんが、近所のボス猫に導かれてきたようです。この子猫も工場長夫人が保護しました。

猫風邪を克服したオードリーと月齢が近いことから、試しに2匹を一緒にしてみたところ、すぐに仲良くなり、本当の姉妹のように一緒に過ごすようになりました。

そして、工場長夫人の愛情を感じたのか、オードリーもロングも人間との生活にどんどん馴れていきました。触られることやブラッシングされることが大好きで、特にロングは、すぐに寄って来て膝の上に乗り、撫でてもらうとゴロゴロ言いながら、いつまでも離れたがらなくなりました。

心ある人たちの幸せへ導くバトンが実を結んだ

そんな2匹にたっぷりの愛情を注ぎ続けた工場長夫人でしたが、御歳70代。「多くの猫たちの世話をするには限界がある」ということで優しい里親さんへの譲渡を目指し、東京の保護猫団体・みなとねこにオードリーとロングを預けることにしました。

そして、2023年5月。オードリーとロングがそろそろ1歳を迎える頃、2匹はみなとねこが開催する譲渡会へ参加しました。

そこでオードリーとロングを一緒に迎え入れてくれる優しい里親さんが現れ、2匹は仲良くこの方の家で暮らすことになりました。オードリーとロングを引き合わせ、ずっと愛情を注いできた工場長夫人もきっと喜んでいることでしょう。

幸せへ導くためのバトンが、心ある人たちの連携で実を結んだ好例です。みなとねこのメンバーもまたオードリーとロングの末長い幸せを願い、そして、今後の活動にかける思いを改めて強く胸に抱きました。

※現在みなとねこでは特定の協力団体以外からの保護依頼などは受け付けておりません。

みなとねこ
https://www.minatoneco.com/

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