立ち退き案件からの緊急レスキュー
2022年7月、関東地方のある一軒家、強制退去を命じられた家に家具の差し押さえに入った業者は凄惨な現場を目にした。
そこには子猫3匹を含む14匹の猫と犬が1匹置き去りにされていたのだが、ドアを開けるや否や 数年に渡って堆積された糞尿の匂いが鼻をついたという。
「いつからこんな状態になっていたのかは分かりませんが、みんな汚物まみれのケージの中にいて、犬は何年もまるで伸び放題の毛が絡まって、さながら妖怪のようでした。目が見えているのかいないのか分かりませんが、私たちを見るとぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいました」
驚くべきは、この家には幼稚園児も一緒に暮らしていたということだった。一室だけはきれいだったので、人間はそこで暮らしていたのかも知れない。この業者は、兼ねてから付き合いのある愛護団体NPO法人ねこけんに保護を依頼したが、ねこけんも余裕があるわけではない。シェルターが満室だったため、空きが出るまで業者が大人猫を保護することになったという。
視力を失い、それでも命は助かった
子猫たちは猫風邪をひいていたが、母猫が必死に守り育てていたようで、3匹とも痩せてはいるが元気はあるようだった。犬と一緒に八巻動物病院が預かってくれた。
小型犬はいくつかの犬種を掛け合わせたミックス犬のようだった。爪は巻き爪の状態をはるかに超えて、ぐるぐるおかしな形に伸び、いくつもの毛玉になった被毛は糞にまみれていた。シャンプーしてもらえなくなったのはいつのことなのか。何十年ぶりかもしれない。八巻動物病院で診察を受けると、右目は潰瘍、両目とも白内障になっていて、ほとんど視力を失っている状態。お尻は肛門腺が破裂し出血していて、成犬なのに体重は3.1kgしかなかった。
「小型犬は丸刈りにするしかありませんでした。子猫は目が潰れかけていました。開いた目からは膿がどろりと流れ出しました」
ねこけん担当者は言う。
「強制的に立ち退きを迫られてペットを置き去りにする人が後を断ちません。立ち退く人間は、なんとか国が対応してくださると思いますが、残された動物たちは行き場がありません。家具と一緒に業者に連れて行かれ、どうにもならない場合は規則に従い、愛護センターへ送られます。この業者さんは猫を保護してくれるだけ良心的ですが、それも限界があります。今回は幸い全員レスキューされて、猫も小型犬も里親様が見つかりました」