「シェイクは氷を溶かすな」→いや、溶かすべき バーテンダーが実証実験「シェイクすれば口当たり柔らかくなる?」定説を検証

中将 タカノリ 中将 タカノリ

シェイク加水がアルコールの口当たりの与える変化を実験する投稿がSNS上で大きな注目を集めている。

「『シェイクに空気は関係ない』←最近の実験、研究対象です。シェイクをするとカクテルが柔らかくなる。と教えられ盲目だった。“アルコールの角が取れるって取れた角はどこ?”や“空気がアルコールのどこに作用するの?“などの自分の声を無視してたんです。が最近それに向き合ってます。結論から言うと『空気関係ない、水分子とエタノールクラスター』です。エタノール分子は水分子と仲が良い子と、水分子と仲が悪い子で出来ているそうです。でも時間と共にバラバラになる……と考えられてたんですが、そうはならず集合体を作る、つまりはクラスター化しちゃうんです。その塊を無理やり引き剥がすのがシェイクです。無理やりの衝撃でクラスターをバラバラにするからアルコールが柔らかく感じる。と言うことだと思います。そこで実験です、無理やりウイスキーの水割りを攪拌してみます。スピンドルミキサーがないのでミルクフォーマーで代用。結果アルコールの角が取れた飲みやすい水割りが出来ました」

と動画を交えて実験を紹介したのは「”まきの”バーテンダー」こと牧野和明さん(@bartendermakino)。

空気が味わいに作用していないことの証明としてストレートのウイスキーのみを攪拌してみたが結果はほとんど変わらず、アルコール特有の強いアタックを感じたそうだ。またカクテルでも実験したが、氷を入れてシェイクすることで増えた水分子とエタノール分子が小さなクラスターを形成し、それによってアルコールから受ける皮膚感覚の刺激が弱まるから「優しい」「柔らかい」などの官能評価になるのではと感じたという。

バーテンダーはシェイクの技術習得にあたり「氷を溶かすな」と教わるものだが、逆に氷を溶かすことが重要だったとは…。

驚きの結果にSNSユーザー達からは

「学生の頃、実験室の超音波洗浄機(メガネ屋の前に置いてあるようなやつ)を使うと酒が旨くなるという通説がありました。シェイクほどの撹拌は起きないので空気は入りません。同じことが起きていると思います。」
「興味深い実験見せていただきありがとうございます。芋焼酎で、水と混ぜて数日寝かせると、水と焼酎がなじんでまろやかになるとされる前割りという飲み方があります。放置する前割りと、衝撃を与えるシェイクと、やることは真逆なのに、得られる効果は同じっぽいのが面白いなと思いました」
「なるほど、解説がわかりやすくて勉強になりました。昔気質で盲目的にやってると陥りやすいワナかもしれませんね。」

など数々のコメントが寄せられている。

バーテンダーに聞いた

牧野さんに話を聞いた。

ーー今回の実験のきっかけは?

牧野:原典の「スクリュードライバー」です。ウオッカとオレンジのカクテルなんですが、こと名前がついた所以はスクリュードライバーを使って混ぜたからという説があるんですね。そこでお客様に「やってみます?」と提案したのが始まりです。バーにスクリュードライバーは何故か無かったので、ミルクフォーマーを使いました(笑)。

原始的なカクテルの作り方なので雑な味になると思っていたんですが、むしろアルコールの刺激が弱まっていました。いわゆる「アルコールの角が取れた」と言われる状況です。

そこから「アルコールは安定している時が柔らかく、刺激を与えると棘が出る」とか「空気がアルコールの角を取る」という言葉に半信半疑だった自分がむくむくと起き出しました。「アルコールの角って言うけど角ってどこ?棘ってなに?アルコールが尖るの?」と調べたくなって、手元にあるもので実験したわけです。

まずはウイスキーの水割りで実験しましたが、アルコールの刺激はたしかに柔らかくなりました。水で割っているから柔らかいと感じるだけかも知れないので、ストレートでやってみると変化はありませんでした。本命のカクテルでは大きな変化を感じました。

「どういうことだろう?」と理解が乏しいながらも論文を探し、夏休みの自由研究が始まった訳です。

ーー「空気を含むと角がとれる」「シェイクは氷をとかすな」等、これまで言われてきた常識と相反する今回の結果について感想を。

牧野:「空気を含むと角がとれる」は幼児語のようなものなのかなと思いました。分からない子供に説明する為にかみくだいて物を言うようなもので、バーテンダーになりたてで右も左も解らない人の為の言葉、教えなのかなと考えました。空気が直接的にエタノールを変化させているとは考えませんが、間接的にカクテルを飲みやすくはしていると思えますので。

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