「売地」の看板が出てからだいぶ年月が経っているのに、そのままになっている土地、ありますよね。人気の住宅地の一角なのに、なぜかなかなか買い手がつかなくて近所からも不思議に思われていたりします。そんな土地が長く売れていないのには思いもよらない意外な理由がありました。
理想の土地に…思いもよらない条件
Aさん(関東在住、30代、主婦)は、家族4人で暮らす一戸建てを建てるための土地探しをしている最中、ある土地に出会いました。
閑静な住宅地で、少し広めの30坪。徒歩10分以内に保育園や小学校、病院にスーパーとひと通りの施設がそろっていて、歩きやすい歩道があり、人通り・車通りが少なすぎることも多すぎることもなく、Aさんにとって理想的な土地でした。
「なんでこんなに条件のよい土地が更地のまま残っているんだろう……? 実は売りに出ていない? それとも値段が相場よりだいぶ高いとか??」と、不安に思いつつ不動産会社に問い合わせたAさんが聞いたのは、思いもよらない「条件」でした。
「土地に残してある桜の樹を、切らずに残していただけると書面でお約束頂ける方にお売りします」
確かに、土地の片隅に樹が一本植わっていました。
「でも、ちょうど駐車場にしたくなる場所だし。何より桜って手入れも大変だし、夏は毛虫が付くし、花が散るのも落ち葉になるのも『自分の家』だと思うと、とっても大変そう……」
売り主さんはご近所にお住まいらしく、買って数年後にコッソリ切ってしまうというのも、ご近所付き合いを考えると無理っぽい。
結局購入は諦め、別の土地に申し込みを入れたそうですが、あの土地がどうなったか、Aさんは今でも気になってしまうそうです。
古い町工場、機材や古い薬品も多く残っていて…
売地(古家付き)という不動産広告もよく見かけますが、ひとくちに「古家」といっても色々なパターンがあるようです。
Bさん(関西在住、40代、経営者)は店舗兼住宅を建てられる広めの土地を探して街歩きをしている最中、朽ちかけた古い町工場跡を見つけました。背の高い倉庫のような、モルタルとブロックでできた壁には蔦が生い茂っていて、長年空いたままになっていることが一目でわかる建物です。
さっそく土地の持ち主にコンタクトを取ったところ、相手は町工場を運営していた夫をだいぶ前に亡くしたという高齢女性でした。
なんでもあの工場には古い重機や薬品など、処分をするのに大きな手間と費用が掛かるものが多数残されているのだそう。その費用を負担できず、気にかかっているものの、思い出の工場を潰すのにも積極的になれず、どうしよう…という状況だったそうです。
残された薬品のなかには土壌汚染が心配なものもあり、費用が読めなかったので結局は諦めたBさん。経営者としては、体力とお金があるうちに「残された家族が困らないようにしないと……」と、学ぶことができました。
家族のもめごとに巻き込まれるのは…
小さな家を建てるかマンションを買うかで悩んでいたCさん(関東在住、50代、会社員)。良い物件があれば……と時々不動産サイトをチェックし続けてきましたが、ある日ふと「この土地、ちょっと坪単価が高めだし、18坪で小さいからずっと売れ残っているんだろうな……」という土地が気になり、見に行くことにしました。
ところが、いざ現地に着くと、現況にはそれっぽい空き土地はありません。不思議に思って確認したところ、現在は「家の庭」になっていて、敷地の一角を分筆して売りに出したものであることがわかりました。
しかも不動産屋曰く、「本当は…あの土地に『半同居で家を建てたらどうだ』と息子さんに言ったところが断られてしまったそうで。腹いせに『戻ってこなければ売ってしまうぞ』と売りに出しているんですよね。嫌がらせで出しているようなものだから、なかなか売れないでしょうね」とのこと。
「家族のもめごとに巻き込まれるのは……」とすぐにCさんは諦めたそうです。