ペットの遺骨を置物や飾りに加工 京都の窯元が特許取得「手で触れたいと思う方が多い」

小森 有喜 小森 有喜

京都の伝統工芸品・清水焼を手がける「山川製陶所」が、ペットの遺骨を陶器のように固めてさまざまな形に加工するサービス「想久の石珠(そうくのたま)」を始めた。お守りのように携帯したり、ペットがいつもいた場所に飾ったりと、さまざまな供養のかたちを実現する。不純物を入れずにほぼ遺骨灰だけで加工する技術は世界初だといい、特許も取得した。

樹脂で遺骨を接着したり、遺骨を薬剤で溶かしてガラス化するといった他社商品はあったものの、遺骨以外の不純物が多く含まれていた。想久の石珠では遺骨灰の含有量が9割以上で成形することを実現し、握りしめても壊れない高い耐久性・不可燃性が特徴だ。

開発したのは、4代目窯元の山川敦司さん。大徳寺孤篷庵小堀卓巌和尚から「泉聲窯」「夕陽」の号を受けるなど、実力のある伝統工芸士だ。

墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)の定めや宗教的な価値観から、人間が入る墓地・霊園の多くはペットの遺骨を収容できない。ペット霊園や自宅の庭に埋葬するのが一般的だが「近くにペット霊園がない」「庭がなく埋葬できない」といったケースがあるほか、遺骨を手元に置いておきたいというニーズも多い。

山川さんのもとには、10年ほど前からペットを手元供養する骨壺の依頼が届くようになったという。これを機にペット供養の問題に関心を持ち、陶芸の技術を生かして「遺骨そのものを陶器のように固めることはできないか」という発想に辿り着いた。

もともと、陶器に使う「釉薬」が灰などのケイ素分で作られていることもヒントになった。そこから、仕事の傍ら研究を重ねた山川さん。どの溶剤をどの程度入れればよいか、割合を変えるなどして10年近くの試行錯誤の末、遺骨の含有量を9割以上残したまま成形することに成功した。

実際に利用した人からは「今まで骨壷を開けて遺骨を見ることはなかったけれど、石珠にしたことで触れることができる」と、喜ばれているという。

「想いは皆さまそれぞれ違いますが、触れたいと思う方が多いようです。手で触れることができる、そばにいると感じることができるのが大きいのではないでしょうか」と山川さん。「新しい供養のあり方のひとつとなって、残された人々の悲しみを癒してくれることを願います」と話している。

30グラムまでの遺骨で3万円〜など、遺骨の量ごとに基本料金が設定されている。薄い陶器のプレートにペットの写真をプリントしたり、絵をつけたりするオーダーメイドも受け付けている。詳細や問い合わせは想久の石珠(そうくのたま)ホームページから。

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