立ち入り禁止区域で、グシャッと踏み潰された小さな卵 せっかくの保全活動が…実は絶滅危惧種「とても悲しい出来事」

谷町 邦子 谷町 邦子

「巣立ちまで優しく見守っていただければ」

コアジサシは千葉市が政令指定都市になった翌年の1993年に市の鳥として制定された、特別な鳥。千葉市内の主な繁殖地となっている、検見川の浜はヨットやウインドサーフィンなどのマリンスポーツや釣り、散策などで多くの人が訪れる場所でもあります。千葉市環境保全課に、今回の件について聞きました。

同課はコアジサシが巣作りや子育てをしやすいよう、ロープ柵で区画した保護地区を設けるだけでなく、保護地区内の雑草除去や砂起こし、定期巡回の実施(委託)、ロープ柵にネットを設置するなどの取組みを行ってきたとのこと。それだけに、「我々としても貴重種保全の取り組みを進めているところですので、とても悲しい出来事だと考えています」と担当者は話してくれました。

再発防止のために、事態を把握した翌日に4カ国語を並記した注意看板2種類を20枚ずつ追加設置するとともに、千葉市のホームページでも注意を促す情報を追加したとのことです。

実はコアジサシは、2020年は399巣の営巣があり20数羽の巣立ちが確認されたものの、2021年は16巣の営巣があったのもの巣立ちはなし、2022年は営巣が確認されなかったと、昨年までの2年間は寂しい結果になっています。

「コアジサシの生息状況の調査を委託している専門家によると、2020年にカラス類や哺乳類による卵・ヒナの捕食が一定数あった影響が示唆されています。これを親鳥が記憶しており、翌年度以降、当地での巣作りを避けていたことも想定されます」。実は、人間だけではなく、天敵となる動物にも脅かされるコアジサシ。せめて捕食者ではない人間が繁殖の邪魔をしないよう心掛ける必要がありそうです。

同課の担当者は、「海風が吹く中で飛ぶ姿の美しさやヒナの可愛さなどを間近で見て親しみをもってもらえる検見川の浜の環境は、人と鳥の双方にとってとても貴重だと考えています。巣立ちまで優しく見守っていただくとともに、より多くの方にコアジサシの魅力と保護の必要性を感じてもらうことができればありがたく考えています。なお、特にコアジサシの卵やヒナは、一見して砂浜の色と見分けがしづらいので、くれぐれもロープで囲った保護地区内には立ち入らないようにお願いします」と、美しい鳥の環境を守るためにメッセージを伝えてくれました。

◇ ◇

コアジサシについては、千葉県のホームページにて、これまでの保護活動の歩みを公開。繁殖地の整備やコアジサシの営巣、ヒナの巣立ちについて記録されています。

絶滅危惧種の貴重な鳥であると同時に、成鳥の美しさ、ヒナの愛くるしさで広く愛される鳥ということが伝わってきます。しかし、地面に浅い穴を掘った巣に、砂浜そっくりの色や模様の卵を産むなど、人間が繁殖地に足を踏み入れると、簡単に命が失われてしまう存在でもあるようです。

秋までは砂浜に遊びに出かける機会が多い時期ですが、海辺の動物を傷つける行動をとらないよう、注意しながら楽しみたいですね。

■松村雅行さん・髭面燕鷗(@higeduraajisas1)のTwitter https://twitter.com/higeduraajisas1
■「NPO法人リトルターン・プロジェクト」ブログ https://littletern.hatenablog.com/
■「NPO法人リトルターン・プロジェクト」公式ホームページ https://littletern.net/
■千葉市公式ホームページ内「市の鳥『コアジサシ』について」 https://www.city.chiba.jp/kankyo/kankyohozen/hozen/shizen/sizen_koajisashi.html

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