立ち入り禁止区域で、グシャッと踏み潰された小さな卵 せっかくの保全活動が…実は絶滅危惧種「とても悲しい出来事」

谷町 邦子 谷町 邦子

小石や貝殻が散らばる砂地についた足跡、目をこらすと、そこには砂地と似た模様の小さな卵が……。「産まれ来るはずの小さな命が3つ奪われました」とツイッターに投稿された写真に大きな反響がありました。投稿者と撮影された浜のある千葉市に保護の取り組みについて伺いました。

写真を投稿したのは髭面燕鷗(@higeduraajisas1)こと松村雅行さん。発見した卵は、環境省のレッドリスト絶滅危惧2類とされ、繁殖地の保全が必要とされている野鳥・コアジサシです。

検見川の浜(千葉県千葉市)で人が立ち入れないようにロープ柵を張り巡らしていた場所とあって、「自分には一切理解出来ないのですが、何故か保護区の中に立ち入る人がいます。あなたの足が小さな命を奪ったことをお分かりですか?入ってはダメです!」と訴えました。

投稿には、「残念なことです。卵がつぶされたことも、保護区域内に入る誰かがいることも、残念」「小さな小さな命。どうか生きものファーストの人間がふえますように。すごく悲しいです」「絶滅危惧2類の鳥さんとのことです。とても悲しいですね……。保護区は気づかずに入れてしまうような高さではなくしっかりとロープで区切られていたようです。ボランティアや環境保全課など、たくさんの方が協力してやっと作った環境でこんなことがあるなんて残念な気持ちになりますね……」など共感するコメントが多数寄せられました。

また、「観察に通っています。何人かロープ内に入り、その都度注意しました。ロープが張ってある意味を理解していないのです。近道しようと中に入る人もいます。看板なども皆さんみていません。駐車場から入る入口あたりにもっと大きな看板、注意書きが必要と思います」「近くに住んでいました。ロープ張ってあるのに入る人がいるなんてびっくりです。広報なんかで周知出来ないものでしょうか」など、別の対策を願うコメントも。

コアジサシの保全を目的とするNPO法人リトルターン・プロジェクトに2003年から所属し理事をつとめ、20年間に渡って保護に携わる松村さんに、その時の様子や鳥への思いについて語ってもらいました。

「今後二度と悲しい事故が起きないように」

踏みつぶされた卵が発見されたのは、7月3日。毎週月曜日に、検見川浜コアジサシ保護区の巣の位置や卵やヒナの数などを確認するため、保護区の中を歩いて調査していた時のこと。

千葉県の管理下で、千葉市が毎年、県と取り決めた検見川の浜の一部を占有許可を得て「コアジサシ保護区」と設定された場所でした。千葉市とボランティアとの協力で、保護区としてロープ柵を設置、毎年営巣地(コアジサシが巣を作る場所)を除草するなどの整備を行っているそうです。

「立入禁止になっているので、営巣調査に入った自分たちの足跡しかついていないはずなのですが、残念ながら保護区を横切る足跡をよく見ています。今回の事故も波打ち際から入って来て、もうすぐヒナが産まれるはずの巣の卵を3個踏みつぶして反対側に抜けていました。調査で歩いている時に足跡に気がつき、また入っている人がいると足跡を追って踏みつぶされた卵を見つけました。あってはならない事故なので、足跡がよく分かるように真上から写真を撮りました」。

絶滅危惧種のコアジサシが子育てしていることを示す注意看板や、ロープ柵が設置されている同保護区。松村さん個人でもグーグルマップ上に「検見川浜コアジサシ保護区」として地点登録しています。

対策がなされているにも関わらず、「残念ながらまだコアジサシの生態などについて多くの方に知られていないので、今回のような残念な事故が起きています。今回、ツイートが拡散されたことで、より多くの方に砂浜に簡単な浅い穴を掘って卵を産む鳥がいることを伝えられたのではないかと思っています。今後二度と悲しい事故が起きないでいてほしい」と話してくれました。

松村さんは、今回の検見川の浜(千葉県千葉市)で2018年から取り組むほか、森ヶ崎水再生センター屋上人工営巣地(東京都大田区昭和島)、葛西海浜公園西なぎさや東京港野鳥公園と東京湾内でも活動し、これまで人間がコアジサシの命を脅かした場面を何度も見てきました。

「今回の事故と同じように立ち入った人によりヒナが踏みつぶされたこともあります。また、カメラマンさんたちがロープ柵際にずらりと並び、保護区内で営巣するコアジサシやシロチドリ(コアジサシと同様、砂浜や干潟、河川敷などに巣を作る渡り鳥)の繁殖活動に影響を与えています」

直接踏みつぶしてしまうだけでなく、たくさんの人間が集まり、圧迫感を与えることで繁殖しづらくしてしまうこともあるようです。

「コアジサシの魅力はやはりスタイルの良さと産まれてくるヒナの可愛さだと思います。ヒナの可愛さは鳥界で一番だと思っています」と、語ってくれた松村さん。きっかけは悲しい出来事でしたが、今回の事件でコアジサシがどのような鳥か広く知られ、関心が高まることを願わずにはいられません。

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