スポーツ紙に就職し、37年間にわたって禄を食んだわけで、普通の人に比べると競馬をはじめ、ボートレース、競輪などの公営競技とも縁の深い人生を送ってきたことは間違いない。
記者として公営競技の担当をしたことはなく、紙面に原稿を書いたり、予想を掲載したことは一度もない。それでも主催者の招待でレース場に足を運ぶことは度々あり、その時にはおぼつかない手つきで投票用紙に鉛筆でマークをつけ、レースを楽しんだ。
中でも中央競馬については、デイリースポーツが1999年に「馬三郎」という競馬専門紙を発刊し、その運営に仕事として携わった時期もあって、栗東、美浦といったトレーニングセンターを訪ねたり、コースの上だけではない舞台裏の様子を目にする機会も多く、特別に接触の度合いが深かった。
10年ぶりほどにもなるだろうか。「京都競馬場に来られませんか」という招待が届いた。声をかけてくれたのは京都放送(KBS)の細井社長。サンテレビ時代から公私にわたり親しくさせていただいている。サンテレビでは毎週土曜日の午後にはKBS京都制作の競馬番組を放送、逆にサンテレビのタイガース中継はKBS京都でも放送されており、局同士のつきあいは特に深い。
京都競馬場は老朽化していたこともあり、2020年秋から大規模な改装工事に入っていた。もちろんレースは開催できない。2年半足らずを経てようやく新装なり、この4月22日がこけら落としとなったばかりだ。そのほやほやの競馬場で1日レースを楽しみましょうというありがたいお誘いだった。
競馬場の目の前にある京阪電車淀駅の前を通って関係者駐車場に車を進めながら、窓から見える建物、周辺施設の様子はこれまで見慣れたものから一新されていた。愛称は「センテニアル・パーク」というのだとか。間もなく開場から100年を迎えることもあり100周年を意味する「centennial」がキャッチフレーズに使われた。
配置こそ変わっていないが、来賓などが出入りする建物もまっさらにリニューアルされていた。案内されたのは6階の特別室エリア、ここもまた床から天井に至るまで、改装前の面影は微塵もうかがえない。
案内されてパドックに行ってみると、かつての円形ではなく、陸上トラックのような楕円形に形を変えていた。観客がそれぞれのフロアから見やすい工夫もされており、各階鈴なりのファンがパドックを見下ろしている。
スタンドはシートの間隔がゆったりと広げられ、馬券の投票所エリアも清潔感が際立つ。女性来場者向けに豪華なパウダールームを設けるなどの工夫も凝らされているそうで、女性が足を運びやすい競馬場に生まれ変わったことは間違いない。
もうひとつ、目に見えない部分かもしれないが場内スタッフの来客対応が一段と洗練されたことにもすぐに気がついた。
部屋に戻って投票締め切りが間近に迫った第5レースから馬券の検討をスタートした。頼りはもちろん、自宅から持参したデイリースポーツの競馬面だ。複雑な投票方式の理解不足から、マークした投票用紙を自動発券機に入れては記入の不備を機械に指摘されて有人の窓口にSOSを求めることも二度、三度。素人ならではのご愛敬と自嘲するしかない。
メーンの11レースまでの7レース、外れて当たって、笑って泣いて…。財布の中身は減りもせず、増えもせずなら上々か。毎週欠かさず競馬を楽しむという細井社長からは「次は阪神競馬場、いかがですか?」と誘われている。