「お茶を淹れるのって難しい」から飲まない? 老舗製茶業がオープンした日本茶カフェ、関西初の試みも

中河 桃子 中河 桃子

「日本茶は淹れるのが難しい」「ちゃんとしたお茶を飲む機会がない」という声に危機感をいだき、製茶業を営む「丸安茶業」が、滋賀県甲賀市でカフェ「頓宮茶寮(とんぐうさりょう)」を5月16日にオープン。卸売業のみに専念していた同社が、斜陽産業である日本茶の魅力を発信するために多様なお茶ドリンクやスイーツを展開します。

1872年創業の「丸安茶業」は、滋賀県最大の生産量を誇る土山(つちやま)町で、日本茶の栽培、製茶、卸売を行ってきた、県下有数の企業。店主を務める5代目の前野安治さんは、「嗜好品であふれる今、日本茶の消費量は、昭和時代の最盛期と比べて約1/10にまで落ち込んでいます。そんななかお客さまの声から、お茶が日常から遠い存在になっていることを実感しました」。

これまでのように「良いものを作れば勝手に売れていく」時代が過ぎたなか、昔ながらの日本茶のPRを小売店に任せる卸売業者の姿勢を見直し、お茶の素晴らしさを自ら発信していくプレーヤーも担っていくこと社をあげて決心します。そこで創業150年の節目に当たる2022年から幅広い世代が訪れやすいカフェを計画。場所も自社の茶葉を手元ですぐ使えるよう同社の敷地内にしました。

使用するのも滋賀県産のお茶のみ。前野さんは「お茶の名産地である滋賀で、土山のお茶は濃厚な旨みが特徴です。この場所から、お茶好きを増やしていけたら」と意気込みます。

実は滋賀は、伝教大師最澄が唐から持ち帰って播いた茶葉発祥の地と言われています。気候や地形もお茶を栽培するのに適しており、滋賀のお茶は総称して「近江(おうみ)の茶(近江茶)」と呼ばれています。土山茶のほかに、朝宮(あさみや)茶、北山茶(日野)、政所(まんどころ)茶が有名です。

抹茶が濃い! テリーヌなどのスイーツも

そんなお茶をじっくり楽しめるように丸安茶業の茶師が厳選した「3種のお茶飲み比べセット(日替わり和菓子付き)」1800円(店内のみ)や、クリームやフルーツなどをトッピングできる点てたてアイスお茶ラテ650円(テイクアウト可)など今どきなものも。

スイーツには日本茶で特にポピュラーな抹茶とほうじ茶のメニューが楽しめます。おすすめは、「抹茶のグレードと濃度にこだわった」という「茶寮テリーヌ(抹茶)」770円。フォークを入れるとずっしりとした重厚感。口の中に白あんのソースと、抹茶の濃厚な香りと味わいが広がり、ゆっくりと溶けていく、満足度の高い一品です。

生地には、ハイグレードの茶道用抹茶を贅沢に10%も使用。一般的に、抹茶味のお菓子に使われる抹茶は1%程度だそうですが、同店では製茶業の利点を活かし、たっぷり練り込んでいます。濃度と美味しさのバランスを保つには「配合率は10〜15%が限界です」と前野さん。

オープンしてからは、「インスタグラムを見てきてくれたお客様が多数いらっしゃいます。現在は、茶寮テリーヌが一番人気です。持ち帰りには生茶プリン、ドリンクはここ最近暑いのでシュワッと爽快な炭酸抹茶が人気です。年配の方に付いてお孫さんや娘さんが同伴してカフェを楽しんでくれる姿は目指すところだなと改めて思いました」とのこと。

また今後、楽しみにしたいのは、夏季から稼働予定の焙煎機「頓宮ロースタリー」。客が好みの茶葉と焙煎度合いでほうじ茶が作れる関西初の“シェアロースタリー“です。雁金や煎茶など4種の茶葉と、浅煎り、深煎り、通常焙煎の焙煎方法を自由に組み合わせることで「マイほうじ茶」が完成、これも製茶業をおこなっている同社だからこそなせる技。作ったほうじ茶はイートインも可能。焙煎したての香ばしさをたっぷり堪能できるようになるとのこと。

店内は製茶業らしく、ふるいなどの古道具をインテリアに活用したり、器や照明には作家物の信楽焼を使用するなど、地域色豊かな内装も魅力です。場所はJR草津線貴生川駅から田村神社行きバスで約20分「市場口」バス停下車すぐ。車であれば、新名神高速道路「甲賀土山」ICを降りて3分の国道1号線沿い。信楽焼の窯元巡りや、忍者施設観光などの合間のお茶休憩に重宝されそうです。

甲賀土山日本茶カフェ「頓宮茶寮」
2023年5月16日(火)オープン

住所: 滋賀県甲賀市上山町頓宮26

営業時間:10:00~17:00(LOは16:30)、物販販売:8:00〜19:00
電話:0748-67-0015

Instagram:https://www.instagram.com/tongu_saryo/

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