「映画GotG3は締めくくりとして完璧」「日本は難しいマーケットだった」 マーベル・コミックス編集長が赤裸々に語るMCUと日本のファン

黒川 裕生 黒川 裕生

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」3部作の最終章、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」が全世界で公開され、日本でも「GotG大好き!」「最高のフィナーレ」と熱い反響を巻き起こしている。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)フェーズ5の一作でもあるこの最新映画やMCUの今後について、マーベル・コミックスの現編集長、C.B.セブルスキーさんに話を聞いた。

「Nice to meet you! CBと呼んでください」

世界中にファンを持つマーベル・コミックスの編集長でありながら、全く偉ぶることなく、満面の笑みで握手を求めてきたセブルスキーさん。インタビュー翌日の5月5日から7日まで大阪で開催されたイベント「大阪コミコン2023」に参加するのを心から楽しみにしている様子だった。

まずはマーベル・コミックスにおけるGotGの位置づけと、「VOLUME 3」を見た感想について伺った。

「GotGの物語はこれまで様々な形で繰り返され、何度も生まれ変わってきたのですが、本作の監督・脚本を務めたジェームズ・ガンは、原作コミックのいろんな部分からインスパイアされながら、映画としてある種オリジナルな物語を作り上げました。その結果、GotGはMCUの中でも異彩を放つシリーズになっていると言えるでしょう」

「VOLUME 3は、トリロジーの締めくくりとしてほとんど完璧な映画である、というのが私の感想です。1作目、2作目と進化してきたキャラクターたちが抱えるそれぞれのストーリーや関係性、そして3作を通して語られてきた大きな物語の決着…全てが見事な大団円を迎えました。そしてこのチャプターが終わったことで、MCUにはまた次のいろんな可能性が開けているのです。マーベル・スタジオのプロデューサーであり、社長でもあるケヴィン・ファイギがどう展開していくのか、私も楽しみにしています」

今後の展開「マーベルを信頼してください」

「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)はため息が出るほど美しい結末を提示し、多くのファンも大満足したことは記憶に新しい。が、MCUはその後も拡大を続けている。どんな勝算があって、一体どこを目指しているのだろう。

「『どこを目指しているか』って?わははは!…OK、まずマーベル・コミックスには80年もの歴史があります。そしてスーパーヒーローたちのコミックは1960年代に始まり、ものすごい数のストーリーが存在する。フィルムメイカーたちは、そこからいくらでも物語を作ることができるのです。想像力がある限り、それこそキリがないほどにね」

「確かに『エンドゲーム』の結末は素晴らしいものでした。私もそれに異論はありません。しかしマーベル・スタジオはこれからもMCUをどんどん大きく展開していく計画ですし、先日ケヴィン・ファイギが発表したように、アベンジャーズについてもいろいろなことを考えています。私からファンに言いたいのは、マーベルを信頼してください、ケヴィン・ファイギを信頼してください、そして映画の作り手たちを信頼してください、ということです。アベンジャーズは『エンドゲーム』で一度、ああいう形で終わりましたが、その他の物語は実はまだ始まりに過ぎません。ファンの皆さんの度肝を抜くようなことを、たくさん用意しています。特に日本の皆さんの反応は、今からとても楽しみです」

「私は6歳だった1977年からずっとコミックのファンですし、編集長になった今でも変わらず大ファンです。長年のファンのひとりとして、これからの展開には心からワクワクしています。映画のみならず、Disney+やコミック、ゲームなどなど…マーベルファンにとって、今こそが最高の瞬間だと感じているほどです」

マーベルにとって日本は難しいマーケットだった

一方で、GotGの3作目が公開される日本の映画館は今、「すずめの戸締まり」や「THE FIRST SLAM DUNK」「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」などの“国産”アニメ映画が席巻。さらに、日本生まれのゲームを原作にした「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」も大ヒット中だ。日本のサブカルチャーにも親しんできたセブルスキーさんは、この状況をどう見ているのだろう。

「正直に言いましょう。日本は僕たちにとってとても難しいマーケットでした。僕はかれこれ20年間マーベルで働いていますが、映画にしてもコミックにしても、日本には『やっと足を踏み入れ始めたかな』という手応えなんです。というのは、それだけ日本には日本独自の素晴らしいコンテンツが豊富にあったから。そして長い間、日本のファンの間でも『日本のマンガやアニメとマーベルは別物』という認識があったように感じています」

「しかし最近になって、実はそこまで違わないのではないかと思われるようになってきた気がします。例えばピーター・パーカーがコスチュームを着てスパイダーマンになる。あるいはトニー・スタークがアイアンマンになる。それって桜木や流川がユニフォームを着てバスケをしたり、シンジがエヴァに乗ったりするのと同じなんじゃないかと。つまるところ、どちらも大事なのは『キャラクター』なのです。そのマインドセットの変化が、近年の日本でのMCU人気につながってきたのではないでしょうか」

映画館で日本のアニメが快進撃を続ける中にあっても、MCUが十分戦えることを確信している様子のセブルスキーさん。最後に、マーベル・コミックスの日本語訳での供給が少ないことについてどう考えているかを聞いてみた。

「確かに和訳はどうしてもメジャーな作品が優先され、ハードコアなファンが求めるものをなかなか出せていない現実があると認識しています。我々としても、そこは改善したい。その辺りについては、良いニュースを近々出せるのではないかと考えています」

日本のファンに向けては、こんなメッセージもくれた。

「私は兵庫県西宮市に住んでいたことがあるので、同じ関西の大阪で初めてコミコンが開かれることを心から嬉しく思っています。日本のファンはマーベルファミリーの一員。これからも皆さんのユニークな愛情を共有できれば、こんなに嬉しいことはありません」

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