おやゆび姫になれる椅子!?座ると閉じる椅子は「大人も座れますよ」 デザインした木工作家に聞いた

太田 浩子 太田 浩子

 丸い花粉のおしべが16本ついた椅子に座ると、ふわっとおしべが閉じて包み込まれるようになる「おやゆび姫の椅子」の動画がツイッターに投稿されて話題になりました。美術・木工作家の「つちやあゆみ(@ayumi__tsuchiya)」さんに、お話を聞きました。

「カリモク家具コラボレーションのおやゆび姫の椅子。コロナもあってしばらく展示できてないけど、また展示したいなぁ。大人も座れるんですよ。#作品紹介」

と紹介された動画には、中心の座る部分の周りに、優しいカーブを描くおしべがならぶ椅子が映っています。座っていないときはおしべは開いていますが、座ると閉じて包み込まれるようなイメージに。女の子が座った様子は、アンデルセンの童話「おやゆび姫」が生まれたときのようです。

「なんと可愛い💕」
「おしべのぽよんぽよん感がなんともいえないですね。」
「温かみと面白さを感じます☺️ なにより、可愛い💓」
「びっくり∑(゚Д゚) 新手のBig食虫植物!? 落ち着いてみたらカワイイ!!w」
「こんな可愛い娘が座れば確かに「おやゆび姫」だけど、ばばぁの私が座ったらハエトリグサになってまう…( ´;゚;∀;゚;) でも座りたい。」

投稿には、さまざまな感想が寄せられました。座り心地もぽよんぽよんで、危険がないように作られていると返信していたつちやさんは、歯車が組み込まれた大きなオルゴールやボールが落ちながら音を奏でる木琴などを、ひとりでコツコツとつくる木工作家です。作品はアートイベントや美術館などに展示するほかに、今回のような企業とのコラボレーション作品も手がけています。おやゆび姫の椅子について、つちやさんにお話を聞きました。

──おやゆび姫の椅子は、どのような経緯で作られたものなのですか?

 2019年に「カリモク家具の製品端材を使って何か作れないか」とお話をいただき、端材資料の中に孤形の合板があったので、それを花びらに見立てて開いたり閉じたりするもののデザイン案を出しました。「捨てるはずの端材からとびきりキレイなイメージのものを作ってみたい」と思ったのがアイデアの原点です。ですが、「これは端材からではなく一から作りたい」と職人魂に火がついたカリモク家具の職人さんがおっしゃって、結局予想よりずっとキレイなものができました。

──木の手触りもとても良さそうです。販売はされているのですか?

 2017年からカリモク家具様とは5作品をコラボレーションしていますが、どれも商品ではなくイベントに出すために作ったものです。定番商品として販売はしていませんが、特注という形でカリモク家具様と相談していただくことは可能です。

──おやゆび姫の椅子で、こだわられた点はどんなところですか?

 2点ありまして、ひとつめは、イチからの制作することになった時に「座ると花が咲く」から「座ると花に包まれる」にデザインの方向を変えた点です。どちらも良いなと迷ったのですが、座った際に包まれる方が安心感とドキドキがあるかなと。また、包まれて閉塞感が出るのは避けたく、デザインを「花びら」から「おしべ」に変更し、それでも花のイメージは保てるよう試行錯誤しました。

──当たったとしても痛くないように作られていますが、閉まる瞬間はきっとドキドキしますね。ふたつめのこだわりポイントは?

 背もたれと手すりのデザインで、地味ながらこちらが一番デザインに苦しみました。花のイメージを邪魔せず引き立て、椅子であるということを分かりやすく示し、何より「安全」なことを全て満たすデザインを探しました。目が行くところじゃないからこそ軽やかに溶け込むデザインである必要があって、デザイン的にはここが一番時間がかかりました。

──なるほど、たしかに溶け込んでいます。動画のような女の子に人気なのでしょうか?

 大人でも座れるので、意外と皆さん座られていきます。人気という点では、女の子のお子様がいらっしゃる親御さんに一番人気でしょうか。「娘を座らせてみたいのですがどこに行けばありますか?」という問い合わせがよくきます。女の子が座った姿は「おやゆび姫」っぽくて、皆さんイメージしやすいんでしょうね。

──これまでどんなところに展示されたのですか?

 最初「ウッドワンダーランド2019」という名古屋のイベントで展示したのですが、その直後からコロナが始まり、その後は「浜田市世界こども美術館」(島根県浜田市)でしか展示できておりません。ようやくコロナでの制限がいくらか落ち着いてきたのでまたお披露目したいです。

──ほかにも木の温もりが感じられるような、さわって楽しめる作品がたくさんありますね。

 体験できる親しみやすい作品を作っています。静岡市の駿府匠宿、神戸市の有馬玩具博物館、無印良品有明店、無印良品東武動物公園駅前店などに常設展示していますので、ぜひ楽しみにいらしてください。

◾️つちやあゆみさんプロフィール
1982年  宇都宮市生まれ 神戸市育ち つくば市在住
会社勤務を経て2008年に多摩美術大学造形表現学部に入学し空間デザインを学ぶ。2012年に同学部を首席で卒業後、音や触れるコトをテーマに木材をはじめ様々な素材でインタラクティブな作品を基本1人手作業で制作している。各地のアートイベント、美術館、病院などで体験型の展示を開催し、無印良品、ベネッセ、カリモク家具、東京ディズニーリゾートイクスピアリなど、企業とのコラボレーションも手がける。

◾️つちやあゆみさん公式サイト https://www.ayumitsuchiya.com

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