昨年キツネダンスが大ブレークし、プロ野球ファンのみならず巷を席巻したプロ野球日本ハムの公式チアリーダー、ファイターズガール。今年は新たに1979年のヒットソングに乗り、鍋型のタンバリンを持って踊る「ジンギスカンダンス」がSNSを中心に話題となっている。このファイターズガールのなかで、メディアに最も多く登場しているのが滝谷美夢だ。
「滝谷」という名字は、文字通り「滝」のある「谷」のこと。こうした「滝」のつく名字は多い(以下、旧字体の「瀧」を含む)。
「滝」のつく名字で最も多いのは、名字ランキング293位の「滝沢」。以下、「滝本」「滝口」「大滝」「滝川」「滝」「滝田」と1000位以内に7名字も入っている。いくら山の多い日本とはいえ、滝はそれほどたくさんあるわけではない。とくに人が住んでいるところには滝はそんなに多くはないはずだ。
また、滝の近くには水田は少ないが、「滝田」が上位に入ってるのも納得がいかない。では、なぜ「滝」のつく名字がこれほど多いのだろうか。
実は、古い時代では「たき」はもっと広い意味で使われていた。『日本国語大辞典』(小学館)でも、先頭に書かれているのは「急な斜面を激しい勢いで下っている水の流れ」である。
『万葉集』にある「石走る多伎(たき)もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ」という歌も「岩の上を流れる急流」という意味である。つまり、高いところから滝壺に水が落ちるような場所でなくても、白波が立つほどの急な流れは「たき」と読んでいた。そうすると、「滝田」は「急流のそばの田」で、これならとくに珍しいわけではない。
さて、「滝谷」という名字は「滝のある谷」である。これは、現在の意味での「滝がある谷」だけではなく、「泡立つような急流のある谷」を含んでいる。
そういう場所は各地にあり、「滝谷」という名字も各地にみられる。なかでも多いのが関西と北海道・東北である。
ところがこの2カ所、読み方が違っている。「滝谷」は東西できっぱり読み方が「たきたに」と「たきや」にわかれており、関西ではほぼ「たきたに」と読むのに対し、北海道や東北では「たきや」が多い。北海道出身の滝谷美夢も「たきや」である。
全国を合計すると「たきたに」と「たきや」がほぼ半分ずつとなっている。