今年末の“廃止”目前になぜか大注目…ジュニアNISA「今からでも入っておきたい理由」FPが解説

福永 涼子 福永 涼子

「ジュニアNISAは今年で制度が終わると聞いたけれど、今からでも使った方がいいの?」…そんな疑問をよく聞きます。

ジュニアNISAは2016年からスタートした、子ども名義で年間80万円まで非課税で運用できる制度です。子どものための資産形成を応援する目的で作られましたが、利用者が伸び悩み、2023年末で廃止されることになりました。ところが制度がなくなると決まってからは一転して、利用者が増えているというのです。はたしてこれから始めてメリットがあるのか、気になりますね。

制度廃止にあわせて「ルール変更」→高まる関心

「ジュニアNISA」(未成年者少額投資非課税制度)とは、「一般NISA」「つみたてNISA」といったNISA(少額投資非課税制度)制度のひとつです。年間の非課税投資枠が決まっていて、その範囲内で運用して得た利益に対して、約20%の税金がかからなくなります。

加入できるのは、日本に住む0歳~17歳の未成年者(※2022年までは0歳~19歳)で、1人1口座のみ開設が可能です。証券会社や銀行等の金融機関で口座開設手続きをしますが、口座開設者本人(子ども)の2親等以内の親族(両親・祖父母等)を運用管理者として登録する必要があります。運用管理者は、子どもの代理でジュニアNISAで保有する金融商品の選定・購入・売却といった投資判断を行います。

投資方法は積立投資・一括投資(スポット投資)のどちらでもいいですが、非課税で投資できる枠は年間80万円までで、非課税期間は最長5年間となっています。また払い出し制限があり、災害などやむを得ない場合を除き、18歳未満で資金を引き出すと課税されてしまいます。

2022年12月末時点でのジュニアNISAの口座数は、一般・つみたてをあわせた成人用NISAの5%程度(金融庁公表)とされています。利用が伸び悩んだこともあり、2020年の税制改正において制度の廃止が決まりました。ただ、それに伴って「ルールの変更」が発表されたことで、奇しくも注目を浴びるようになります。

従来よりも使いやすく?口座開設数は右肩上がり

制度廃止後の2024年以降は、主に以下の2点についてルールが変更されます。

【2024年以降はいつでも非課税で払い出しできる】

ジュニアNISAは、子どもの進学や就職を見据えた「将来のための資産形成」を目的としているため、18歳までは投資したお金を引き出す(払い出す)ことができませんでしたが、2024年1月以降はいつでも自由に非課税で引き出せるようになります。

例えば、中学受験や高校生留学などでお金が必要になった場合でもタイミングにあわせて使えるようになりますね。子どもの進路が多様化している時代、必要な時に自由に使えるのは親としては嬉しい変更点です。

ただし、払い出しの際はジュニアNISAで保有している金融商品は一度に全てを解約しなければなりません。それと同時にジュニアNISA口座も消滅します。

【18歳になるまで非課税で保有できる】

ジュニアNISAは、非課税で運用できるのは投資した年から5年間です。その5年の非課税期間が終了する年が2023年以降に到来する場合、子ども(口座開設者)が18歳になるまでは「継続管理勘定」という非課税の箱(枠)に移され、保有し続けることができるようになります。

もちろん運用も継続できるため、例えば子どもが0歳の時にジュニアNISAで投資を始めると4歳の時に5年の非課税期間が終了しますが、その後「継続管理勘定」でそのまま保有し続けることができます。最長14年間は非課税で運用することも可能になるわけです。

仮に14年間、80万円を預貯金で保有すると利息は約180円(年利0.002%税引後で計算)にしかなりませんが、ジュニアNISAで運用すればもう少し期待できそうです。

   ◇   ◇

これらのルール変更により従来に比べて使いやすくなったと感じる人が増えたようで、口座開設数は制度廃止決定後、毎年右肩上がりに増え続けています。

ジュニアNISA…今こそ「こんな人におすすめ!」

特に未就学の子どもがいる家庭には、今からでもジュニア NISA の活用をおすすめします。

聞いてみると、「祖父母や親族からもらうお年玉やお祝い金を子ども名義の銀行口座にコツコツ貯めています」「現金を封筒に入れたまま家に置いています」というケースが多くみられます。

まさに子どもの将来のための貯蓄を実践されていることは素晴らしいことですが、すぐに使うお金なのかどうか少し考えてみてください。おそらく早くても5年後、もっと先であれば10年~15年後に使うお金だったりしないでしょうか。もしそうならば、一定期間動かさず眠らせてしまうかもしれないお金を預貯金や現金で置いておいたとして、将来どれくらい増えているでしょうか?

筆者自身の体験談ですが、我が家の娘が誕生してからもらったお祝いやお年玉をコツコツ貯めて彼女が10歳の時に80万円になったのを機に、ゆうちょ銀行定額貯金(10年満期、金利0.14%)に全額預けました。当時は金利が高い方で10年後にはそれなりに増えて学費の足しにできるだろうと楽しみにしていたのです。

娘が20歳の時に届いた満期案内の金額を見て愕然としたのを覚えています。なんと利息が約9000円。正直もっと増えているイメージを持っていました(計算すればわかることなのですが)。10年前のあの時、一部のお金でも投資に充てていたらもう少し増えていたのではないかと今になって思っています。

これを教訓に、すぐさま娘名義のつみたてNISA口座を開設し、今は少額ですが毎月積み立てを実践中です。

子どもの将来を見据えた長期投資で教育資金づくりや資産づくりを考えている場合は、金額の大小に関わらず、今からでもジュニアNISAの活用をおすすめします。

今から始める「メリット」「注意点」をおさらい

制度廃止間近の今から始めるメリットと注意点をまとめます。

【メリット】

▽年内に80万円までの投資金額について18歳になるまで非課税で保有・運用が可能
▽来年(2024年)以降はいつでも自由に非課税でお金を引き出せる
▽子ども名義で投資機会をつくることで生きた金融教育ができる

子どもの進路にあわせて柔軟に資金を引き出せるようになったことから、従来の制度よりも使い勝手がよくなりました。

また、ジュニアNISAの活用は手元資金を長期で上手に増やす目的もありますが、子どもが物心つく頃から投資運用に触れる機会づくりにもなります。将来大人になってからも資産形成の手段として投資は必須になってくるでしょう。そのための教育に使える自分ごととしての「生の教材」になるとも筆者は感じています。

【注意点】

▽2024年以降はジュニアNISA口座で新たな投資はできない
▽18歳までに引き出す(払い出す)場合は保有商品を一度に全部解約しなければならない
▽途中で金融機関の変更や金融商品の変更はできない

2024年以降は非課税で新たな投資ができる機会が失われます。制度廃止までに投資した金融商品は途中で変更もできないため、長期保有するにあたっては長い目で成長が期待できる投資先を選ぶこともポイントになってくるでしょう。

   ◇   ◇

来年2024年からは新しいNISA制度がスタートする予定ですが、ジュニアNISAに代わる未成年者が使える同様の制度はなくなるため、残念ながら非課税での新たな投資はできなくなります。未成年の子どもを持つご家庭は、今一度ジュニアNISAの活用を検討してみられてはいかがでしょうか。

ジュニアNISAを始めるにあたっての手続きや相談の窓口として「あなたにとってベストなプラン」を親身になって一緒に考え、長きに渡り運用の伴走をしてくれる先を選ぶことも大切な要素になってきます。迷った時には、お金の専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)を利用することも選択肢のひとつにしてみてくださいね。

◆福永涼子(ふくなが・りょうこ)FPオフィス「あしたば」のファイナンシャルプランナー(CFP)。2001年にFP資格取得しFP仲間と共に子どもの金融教育を推進。その後、銀行での運用相談業務を経て現職に至る。自身の経験もふまえた「働く女性や母親の視点」でのお金に関するアドバイス&サポートには定評がある。年間約250件の個別相談を実施。

▽FPオフィス「あしたば」
https://ashitaba-mirai.jp/

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