【漫画】同じ診断名の子どもが、同じ痛みを抱えているとは限らない…教員の大きな気づきに感動の声

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「同じ診断名がついていても、『私はあの人の痛みがわかる』とは言えない理由」

小学校の教員をしながら、Twitterに自作のイラストや漫画を公開されているネコ先生さん(@nekosensei0519)。子どもたちの教育にあたるなかで見えた大切な気づきを描いた『Same name, different heart.』というタイトルの漫画に、共感の声が集まっています。

漫画の舞台となるのはとある星。そこには、走るのが得意な生き物たちが住んでいました。

ところが、そのなかに水かきがついている2匹がいました。水かきのせいで、2匹はみんなと同じように走ることができません。ですが、そのうちの1匹は、うまく走れなくてもきっと別の得意なことがある、と楽観的に考えていました。やがて、彼は水の中に活路を見出し、そこで活動するように。

ところが、もう1匹の方はというと…。

「あなたは陸のよりあっちが合ってるよ」
「他の人にできないことができるんだよ」

と、周囲は彼にも水の中で生きるよう勧めますが、彼はこう言いました。

「ぼくは、みんなと、おなじように走りたいんだ」

 

「同じ姿カタチをしていても、その心の在りようは、それぞれで違うみたいだ」

という言葉で、漫画は締めくくられています。

ネコ先生さんによると、今回の漫画は「発達障害の子を想定して描きました」とのこと。

いまや、発達障害と診断されることは珍しくなくなりました。学校や地域で、支援を受けながら過ごしている子どもはたくさんいます。

ですが、人間ひとりひとりが多様であるように、診断を受けた子どもたちも、それぞれ違った個性をもっています。周囲の人たちは、その子が「どのような診断をされたか」ではなく、相手をひとりの人間として、その心を尊重して接することが大切ですね。

教員の目線で気づいた大切なことを、分かりやすく伝えた漫画。リプ欄には感動の声がたくさん寄せられました。

「考えさせられる話でした」
「同じに見えても、同じ考えじゃないって事を、改めて考えさせられました。教えてくれてありがとう」
「まさに多様性」
「人の数だけ感受性があるから、解釈も求めていることも全然違うよね」
「みんなと違うことを誇れる人もいるし,そう思えない人もいる。誰に対しても寄り添いたい」
「人は痛いと思う事が一人一人違うし、その痛さの感じ方もそれぞれ。私もそう思います。ただ痛いんだろうなと言うことは想像できるようにしたいと思ってます。そうでないと完全に人の痛みなんてわからないと諦めていたら簡単に人を傷つけてしまうからです」

また、「クラスでも話をしたいのですが」「このイラストを家族でも共有したい」など、実際の子どもの教育に作品を引用したいという方もいました。

ネコ先生さんに聞きました。

――とても考えさせられるお話でした。漫画を描かれたきっかけについて教えてください。

ネコ先生さん:特別支援で、聞き取ることに特性のある子どもたちと関わったことがきっかけです。一人はひとりでいることが苦にならず、絵を描くことを好む子。もう一人は友だちとの関わり合いを望んだ子でした。同じ特性があったとしても、その子の思いや願いによって、その困り感やしんどさがまったく違うことに気づきました。

――作中ではその対比を「泳ぐようになった子」「みんなと一緒に走りたい子」として描かれていますね。

ネコ先生さん:今回の漫画で描きたかったのは、診断名や体の様子など、分かりやすいものだけで子どもを判断し、安易に関わろうとすることへの疑問でした。

――リプ欄には、「二人のその後が気になる」という声もありましたが。

ネコ先生さん:私自身も、子どもたちのことを知れば知るほどに、いかに子の心が流動的に変化し続け、理解するのが難しいかを日々思い知らされます。それを考えた時、彼らのその後を描くことはある種、読者を「分かったつもり」にさせてしまうのではないかと考えました。

――意図して続きは描かなかったのですね。

ネコ先生さん:本人の心と体のギャップ、他者との共存の難しさ、時間や責任による制限…「どうすれば幸せになれるか」の答えがそう容易く出る社会ではありません。だからこそ、描かれなかった「その後」を読者のみなさんと一緒に「もっと考えたい」と思っています。

  ◇  ◇

教員として、発達障害などの特性のある子どもたちの未来について真剣に考えているネコ先生さん。自身の祖母も元教員で、幼少期にこれまでの生徒との関わりをいきいきと話してくれたことが、先生を目指すようになったきっかけだそうです。

Twitterにイラストや漫画を投稿しはじめたのも、もともとは教員の現状や課題、子どもたちとの関わりから学んだ気づきを共有したいと思ったのがきっかけであり、最近は児童心理についても勉強中とのこと。

「特別支援が『特別』と呼ばれなくなることを目指して、発信を頑張っています」(ネコ先生さん)

■ネコ先生さんのTwitterはこちら→https://twitter.com/nekosensei0519

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