将棋のタイトル戦、第72期王将戦7番勝負第5局が25、26の両日、大田市三瓶町志学の国民宿舎さんべ荘で開催される。白熱の勝負結果とともに、毎回注目されるのが、対局時の勝負メシとおやつ。どんなメニューが並ぶのか、調べた。
今回の王将戦はタイトルを持つ藤井聡太王将に羽生善治九段が挑む夢の対局。第4局が終わって2勝2敗。大田市での第5局は、どちらの棋士が勝って、タイトルに「王手」をかけるのか全国から注目されている。将棋のタイトル戦では主に藤井王将が会場で昼食として頼む食べ物が「勝負メシ」と話題を呼び、注目を集めている。
羽生九段は王将戦で過去3回、さんべ荘に来館し、直近では2014年に訪れた。藤井王将は22年にあった王将戦に4連勝してタイトルを勝ち取り、5局目の会場予定だった同館での交流会に参加した。今回は両者に縁がある会場でのタイトルをかけた負けられない対局で、地元では市のPRになると期待が高まっている。
アナゴ、豚肉、イノシシ…地元産食材ふんだんに
さんべ荘の高原充支配人(45)は「(勝負メシは)毎回すごい注目度。地元産の食材をふんだんに使い、大田のにぎわいにつなげたい」と力を込めた。昼食は2日間ある対局日程で、両日の昼に注文するという。同館が用意したメニューは以下の7点。
・三瓶そば
・アナゴ重
・ワサビ飯
・奥出雲ポークのロースカツ丼
・おおち山くじらの肉そば
・市の地鶏を使ったチキン南蛮
・石見銀山和牛のステーキ重
「地元産の食材を使い、今後も継続してメニューとして提供できるもので、かつボリュームのあるものをそろえた」(高原充支配人)という。ボリュームのあるメニューは、将棋はスポーツのように体を動かすわけではないが、集中力が必要でカロリーを消耗するためだ。これまで、棋士によっては昼食で2品頼む人もいたという。
大田市のアナゴの漁獲量は国内有数で「大田の大あなご」としてブランド化に取り組んでいる。市によると、アナゴはうま味成分のイノシン酸の成分量が牛肉や鶏肉を超える。アナゴは良質な油を多く含み、美容、美肌にも効果があるという。
また、奥出雲ポークや、おおち山くじらの名前で知られるイノシシ肉、地元の養鶏業「エコファームささだ」が育てた銀山赤どりや、とろけるような食感の石見銀山和牛は、いずれも集中力には欠かせないタンパク質が豊富。どれを食べてもおいしく、対局でのパフォーマンスを向上させてくれそうだ。
料理は全品、同館が調理して提供するため、厨房の職人は気合が入る。料理長の那須代詞さん(65)は「注目度が高い対局なので、こちらも緊張で胃がキリキリしている。どれを食べても喜んでもらえるよう、腕を振るいたい」と意気込んでいる。
おやつには洋菓子と和菓子が共演
勝負メシと並んで注目されるのが、対局日の午前と午後に1度ずつ注文を受けるおやつ。さんべ荘では今回、市内と美郷町の6店舗から計8点の提供を受けた。メニューは以下の通り。
・バターサンドクッキー、えごまフィナンシェ、レモンパウンドケーキの焼き菓子アソート(パティスリーサングリエ)
・米粉ロールケーキ&藻塩クッキー(同)
・朝摘み苺(イチゴ)と練乳の苺一笑(いちごいちえ)(ガトー・サンマリノ)
・大田産のユズを搾ったホワイトモンブラン(同)
・米粉カヌレ&クッキー(山の駅さんべ)
・あんバターどら焼き”さんべ山”(しまね風土菓ささ井屋)
・浮布(御菓子司さつだや)
・三瓶そばまんじゅうと桜餅(日高恵比須堂)
洋菓子の米粉はいずれも三瓶産。えごまや藻塩など、健康に良いとされるものをふんだんに使った。イチゴやユズといった、地元産果物の甘さと酸味の絶妙なバランスが、疲れた頭脳を癒やしてくれそう。
和菓子では三瓶山に見立てて、ふんわりと焼き上げたどら焼きや、寒氷で梅ようかんと抹茶ようかんを包んだ上品な甘さの「浮布」、自家製あんこと三瓶そば粉を使ったまんじゅうと、地元ではおなじみのものがそろった。
2品を提供したパティスリーサングリエ(島根県美郷町粕渕)の根冝(ねぎ)美紀子店長(34)は「頭を使う対局になるので、甘くて後味が尾を引かないものを選んだ。注文してもらえたらうれしい」と期待した。
タイトルを争う、将棋界を代表する2人はどの勝負メシを選ぶのか。高原支配人によると、羽生九段は以前の対局では三瓶そばをよく注文し、2日連続でそばを食べた年もあったという。今年もそばを選ぶのだろうか。藤井王将は今回が初の対局、勝負メシとなるため、全く予想がつかない。
夢の対局を支える、さんべ荘の勝負メシとおやつ。当日を迎えるまで、2人が選ぶメニューを予想してみるのも面白い。対局後は、現地を訪れて食べてみたい。