舌打ち、専用スペースを占拠…6割が不快な思いを経験 公共交通機関のベビーカーに冷たい社会

まいどなニュース情報部 まいどなニュース情報部

弁護士ドットコム株式会社(東京都港区)が、「公共交通機関におけるベビーカー利用に関するアンケート」と題した調査を実施したところ、公共交通機関でベビーカーを使用したことがある人は約4割で、そのうち約6割の人が「不快な思いや居心地の悪さを感じたことがある」と回答しました。

弁護士ドットコムの一般会員の男女902人(男性509人・女性381人・その他12人)を対象に、2022年11月~12月の期間に行われた調査です。電車やバスなどでのベビーカー利用について、ネットではたびたび話題になっており、2022年11月には、元バレーボール選手の大山加奈さんが、双子対応のベビーカーで都営バスなどに乗ろうとしたところ「乗車拒否」されたと投稿したことが注目されていました。

まず、「公共交通機関でベビーカーを使用したことがありますか」と聞いたところ、「現在使用している」(6.4%)と「現在は使用していないが、以前使用したことがある」(35.6%)を合わせて42.0%の人が「公共交通機関でベビーカーを使用したことがある」と回答しました。

また、「公共交通機関でベビーカーを使用したことがある」と回答した379人に「ベビーカーを最後に使用した時期」を聞いたところ、「2009年以前」(44.9%)が最も多く、次いで、「2020年〜今も使っている」(22.4%)、「2015年〜2019年」(18.2%)、「2010年〜2014年」(14.5%)と続きました。

さらに、「公共交通機関でベビーカーを使用した際、ベビーカーを畳んでいましたか」と聞いたところ、「混雑状況に応じて畳むことがある」(56.7%)、「常に畳んでいる」(30.9%)、「畳むことはない」(12.4%)という結果になりました。

2014年3月に国土交通省は、公共交通機関等におけるベビーカー利用について「ベビーカーを折りたたむことを一律に求めるのは子どもの安全面で困難」とし、ベビーカーを折り畳まずに乗車することができる方針を示しており、同調査においても「2009年以前」の使用者では「常に畳んでいる」が35.8%だったところ、「2020年〜今も使っている」の使用者では「常に畳んでいる」が17.6%と減少していることから同社は、「国土交通省は2014年から公共交通機関などでベビーカーを利用しやすくするための啓発キャンペーンを始めており、こうした動きが徐々に利用者や社会の認識や行動を変えたと考えられます」と考察しています。

次に、「公共交通機関でベビーカーを使ったことで、不快な思いや居心地の悪さを感じたことはあります(ありました)か」と聞いたところ、「ときどきある」(38.3%)と「よくある」(18.2%)を合わせると56.5%の人が「不快な思いや居心地の悪さを感じたことがある」と回答。これをベビーカーを「2020年〜今も使っている」と答えた人に絞って分析しても、「よくある」「ときどきある」の合計は6割を超えていたといいます。

また、不快な思いや居心地の悪さを感じたことが「よくある」「ときどきある」と回答した214人に「具体的な状況」を聞いたところ、「嫌な顔、舌打ちをされた」(59.3%)、「専用スペースを占拠され、どいてもらえなかった」(45.3%)、「乗り降りや通行について協力を求めたものの無視された」(21.5%)などが上位に挙げられたほか、「その他」の回答では、「無言の圧力を感じた」「冷ややかな空気を感じる」「邪魔になっていて申し訳なく感じた」など、直接何か言われたわけではないものの肩身の狭い思いをしたという意見が複数寄せられたそうです。

他方、全回答者に「公共交通機関で他人のベビーカーの使い方について、迷惑に感じたり不快な思いをしたりしたことはありますか」と聞いたところ、「あまりない」(36.0%)、「ない」(29.5%)、「ときどきある」(27.3%)、「よくある」(7.2%)という結果になりました。

また、「迷惑に感じたり不快な思いをした場所」については、「電車」(77.8%)、「バス」(41.2%)、「駅構内(エレベーター・エスカレーター・階段・ホーム・待合室)」(40.8%)などが上位に並びました。

さらに、具体的な「迷惑に感じたり不快な思いをした状況」では、「通路を塞いでいた」(68.8%)、「車内などが混雑している時にベビーカーを利用している」(55.9%)、「踏まれたりぶつかったりした」(35.7%)が上位に挙げられたそうです。

なお、「電車でのベビーカー利用」について回答者からは、「専用車両があればいい」「混雑する時間帯だけでもベビーカーや車いすなどの優先車両があってもいい」など、優先・専用車両を設けるべきという声が寄せられたほか、「車椅子と同じように利用出来る環境が増えるとよい」と車椅子と同様に周囲のフォローや手伝いが必要だという意見がみられたそうです。

また、子育て経験者からは、「他の方の邪魔になるので、公共交通機関ではよっぽど空いていない限り、ベビーカーを広げて子どもを乗せることはありませんでした。重くても抱っこ紐で我慢」「ベビーカーを畳んでいても嫌な顔をされたため、抱っこ紐で乗るようにしていた」など公共交通機関では抱っこ紐を利用していたという人が複数いました。

双子用ベビーカーの経験者からは、「横並び型はとても幅をとるので、狭いバスや混雑時にはかなり邪魔になる。混雑時は避けたり一人は抱っこ紐等で抱っこして一人用のベビーカーを使ったりする工夫も必要なのではと思います」との意見が寄せられたといいます。

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調査結果を受けて、宇都宮大学の大森宣暁教授(都市計画)は「公共交通というのはベビーカー利用者だけでなく、高齢者や子ども連れ、大きな荷物を持った旅行者など様々な方が利用するので、皆でお互い配慮するという意識を持った上で使う必要があると思います。ベビーカー利用者はルールやマナーを守って使い、周りの人はベビーカー利用者の大変さを理解してあげて協力することで、お互い嫌な思いをする割合が減るのではないでしょうか」と述べています。

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