JR京都駅ビル(京都市下京区)の「地下中央口」が昨年12月25日限りで閉鎖された。SNS(交流サイト)で「JR京都駅で最もマイナーな改札口」と表現されるほど、利用が少ない状況などを踏まえた対応という。かつてこの付近には、関西国際空港の国際線搭乗手続きができるカウンターがあったが、利用者数の低迷で20年前に姿を消しており、改札自体の存在意義も薄れていた。
「地下中央口はご利用状況を踏まえ、(12月26日から)閉鎖させて頂くことになりました。長年のご愛顧、誠にありがとうございました。今後は、1階中央口をご利用いただきますようよろしくお願いいたします」
閉鎖前のJR京都駅の地下中央口付近に、そうした文言の張り紙が掲示されていた。JR西日本に問い合わせたところ、閉鎖の理由について「他の改札口に比べて極めて利用が少ない状況で、総合的に判断した」という。
この改札と深い関わりがあったのが「京の空の玄関口」という触れ込みの「京都シティ・エア・ターミナル(京都CAT)」だ。当時の新聞報道によると、1994年の関西国際空港の開業に合わせ、日本航空とJR西日本が京都からの海外渡航者の利便性向上を目的に開設した。
1997年に新京都駅が始動すると、この地下中央口の付近に京都CATが新装オープンした。空港で本来行う搭乗手続きができる窓口で、トランクなど荷物の預け入れや航空券の購入も可能。関空行き特急「はるか」に大きな荷物なしで乗り込めると期待された。
実際、地下中央口の改札を通り抜けてエスカレーターで1階に上がると、関西空港線や嵯峨野(山陰)線のホームへとつながる通路に出る。CATの利用客らにとってスムーズな動線だっただろう。
だが、対象の航空便が限られるなど、肝心のCAT自体の利用数は当初から低空飛行を続けた。CATの設置が持ち上がった当初は1日2千人の利用が期待されたが、2001年度には1日平均約50人と大きく下回った。01年の米同時多発テロ以降、大阪などにあった同様の受付カウンターが閉鎖され、京都CATも2002年8月に業務効率化の一環で閉鎖された。京都府や京都市、京都商工会議所などが要望書を提出したが、存続はかなわなかった。
CAT撤退後、地下中央口の存在感はさらに低下したようだ。ツイッター上では「『京都エアーシティターミナル』の存在が最大のウリだったけど それができなくなったら、ただの微妙な立地の改札口(原文ママ)」「あの地下中央口が閉鎖されるようです。京都シティエアーターミナルの面影も歴史の彼方へ」などのつぶやきがあった。また、「今まで何百回と京都駅使って来て、地下中央口あるのつい最近知った」というツイートも。
実は私自身も、京都駅ビル地下1階の書店に立ち寄ったりトイレを使ったりと、これまで地下中央口付近を幾度となく往来してきたはずだが、その存在を今回の取材で初めて知った。通路の先の奥まった場所にあるため、余計に気付きにくいのだろう。
JR西日本によると、京都CATのあった場所付近は手荷物の一時預かり所になっており、改札に駅係員は終日いない。閉鎖前の12月23日正午ごろに地下中央口を訪れた時は、スーツケースなどを預ける人はいたが、改札を通る姿はあまり見られなかった。
そんな中、改札を通ってホームに向かおうとする女性(62)=右京区=がいたので声を掛けてみた。間もなく閉鎖されることに驚いた様子で、「嵯峨野線を使っているので京都伊勢丹に行く時などとても便利で、人が少ないことも逆に良かった。いつもここを使っていたので閉鎖は残念です」と話していた。
JR西日本によると、荷物一時預かり所は今後も営業を続けるという。