「この窓から見えるタクシーは、違法停車中です」客待ち阻止のユニーク看板が効果絶大 停車時間が9割減「間接的で京都らしい」

塩屋 薫 塩屋 薫

「この窓から見えるタクシーは、違法停車中です」と書かれた、窓付きのユニークな看板がSNSで話題になっています。こちらは京都市の繁華街・四条河原町の南東交差点近くにあり、客待ちするタクシーなどが停車した場合、歩道から見ると透明の四角枠にその車が見える仕組みに。

SNSでは「これ、めちゃめちゃ優秀。関西地域はこういうユーモアがあってとても好きです」「ほんと間接的で京都らしい」「これは考え抜かれた案ですねっ ハッとさせられました」「新宿や渋谷でも、やって欲しいです!」など、感心する声が続々。

ちなみに車道側から見ると、ギョロっとした目のイラストとともに「ドライバーさん 違法停車 みんな見てますよ」の文言が―。この看板を管理する「京都市都市計画局歩くまち京都推進室」の担当者に話を聞くと、2022年2月14日に設置され、設置箇所は1カ所のみとのこと。

「交通ルールを守らないタクシーの存在を認知してもらえたら」

――こちらを設置した理由を教えてください。

市内有数の繁華街である四条通では、一部のタクシーによる交差点内や横断歩道付近での客待ち停車などの道路交通法違反が多く、近隣バス停におけるバス発着の妨害や渋滞発生の要因となっていました。当該看板は、ナッジ(人間の心理的な特性等を踏まえた工夫によって、人々のより良い行動を促す手法)を活用して製作したもので、これによりタクシーの駐停車マナーの改善を目指しました。

――窓から車道を覗ける仕組みは、むしろ歩道側通行人へのメッセージにも見えますが。

タクシーの乗務員と利用者の双方への啓発を意図したものです。交通ルールを守っていないことを見える化することで、違法停車のタクシー乗務員に対して移動を促す一方で、全ての利用者にも、交通ルールを守らないタクシーの存在を認知してもらうことを狙いました。

――なるほど、裏表で文言も異なりますね。こだわった点はありますか?

車道側と歩道側、同時に働きかけるものなので、利用者がタクシーを拾う直前にタイムリーに働きかけるナッジになっています。当時の担当者が旅先で見つけた窓付きの看板から着想を得たもので、看板の高さを調整することで、窓を介して歩道の利用者とタクシー乗務員の目線がちょうど合うようにしています。

――違法停車への効果は出ていますか?

設置前後で効果測定を実施したところ、看板設置前に比べて設置後では1日あたりの違法停車時間の合計が約9割減少しました。

――SNSで話題になっていますが、これまでも反響はありましたか?

看板やフラッグを設置後、所管の警察署への苦情電話が大幅に減少したり、タクシー乗務員の中にも好意的に受け取ってくださる方がいました。また、市バスの運転士さんからは「バスが正着できることで、雨天時でもお客様がスムーズに乗降できるようになり、車いすをご利用のお客様にもご不便をおかけすることが少なくなった」との嬉しい声もいただきました。

   ◇   ◇

記者が現場へ出向いた際には、ちょうど客待ちタクシーが停車し、取材の旨を伝えると走り去っていきました。担当者によれば、共同で看板設置に取り組んだ「NTTデータ経営研究所」からは「ナッジの効果は、時間の経過とともに徐々に小さくなる可能性がある」とのアドバイスを受けているそう。「今後も定期的に効果検証し、安全・快適な歩行空間の創出に努めたいと考えています」と話してくれました。

■「京都市都市計画局歩くまち京都推進室」公式サイト
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/soshiki/9-5-0-0-0.html
■「ナッジを活用した看板がもたらす行動変化」共同実証の実施結果・リリース
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000298761.html

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