議論呼ぶ「晩婚化→少子化」説…若いときに産めば本当にいいの? 国を挙げて若年出産回避を目指したアメリカの場合

谷口 輝世子 谷口 輝世子

  自民党の麻生太郎副総裁は15日、福岡県で開かれた講演会で「一番、大きな理由は出産する時の女性の年齢が高齢化しているからです」と、少子化の最大の要因として晩婚化を挙げた。それでは、出産するときの女性の年齢が若ければ、少子化が解消され、国の財政に貢献するのだろうか。

  アメリカの場合、90年代から、いかにして10代の女性の妊娠を防ぐかに力を入れてきた。

 CDC(米疾病予防管理センター)によると、1990年から1995年までは、15歳から19歳までの女性1000人あたりにつき、年間で60人程度の赤ちゃんが誕生していた。

 しかし、先に述べたようにアメリカは、10代の妊娠をできるだけ抑えるようにキャンペーンを張ってきた。なぜか。10代の妊娠には、税金がかかるからというのが理由のひとつである。2011年に4月にCDCが発表した資料では、10代の妊娠出産は、年間に90億ドル(約1兆1500億円)の税金が使われていたという。

  なぜ、これほどお金がかかっていたのか。医学的な問題としては、若年出産ゆえの妊娠出産時の母体へのリスクがあることや、低体重で子どもが生まれるリスクの上昇、出生時の死亡率が上がることが指摘されている。また、社会的要因としては、10代で出産した母親で22歳までに高校卒業資格を持つ人は約半数。10代で父親になった人は、そうでない人よりも高校卒業率が2割から3割低くなる。

 つまり、高校を卒業しなかったことで、安定した収入を得ることが難しくなり、経済的困窮に陥りやすくなる。この経済的困窮により、10代の母親のもとに生まれた子どもは、より公金によるヘルスケアを必要とし、より里親を必要とするのだという。そこに税金がかかる。

 アメリカでは国を挙げてのキャンペーンの効果があったのだろう。2019年になると、10代の女性1000人あたり16~17人しか生まれていない。アメリカの10代の女性たちが望まぬ妊娠を避け、経済的困難に陥ることを避けられているのは望ましいことだと思う。

  そして、アメリカはやや晩婚化し、やや少子化傾向にある。アメリカの2021年の合計特殊出生率は1.66だった。1965年に3を切り、2010年に2を切り、新型コロナの影響があったといわれる2020年は1.637と、日本よりは、まだ子どもが生まれているが、緩やかな少子化にあるといってよいだろう。

  それにしても、アメリカでは若すぎる出産には社会的コストがかかるといわれたり、日本では高齢の出産は国の少子化につながるといわれたりする。けれども、お国の懐事情にあわせて適齢で出産するよう求められるのは、なんだか息苦しいし、おかしな話だと思う。

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