出産育児一時金の増額にあわせて、産院の便乗値上げが続出 SNS「ただの病院へのお布施」「無意味な少子化対策」

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 2023年4月より少子化対策の一つとして、出産育児一時金が現行の42万円から50万円に増額される。岸田首相は1月4日の年頭記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と語り、いよいよ4月に発足するこども家庭庁にも注目が集まっている。しかしそんな中、Twitterで「近隣の産院が、出産育児一時金の増額にあわせて8万円値上げしていた…」という衝撃的なツイートが拡散され、騒然となった。

 ツイートには、当該の産院のHPに掲載されている料金案内ページのスクリーンショットを2枚アップ。1枚は、2022年12月12日に撮った値上げ前のスクリーンショット。もう1枚は、同年12月30日に撮った値上げ後のスクリーンショットだ。値上げ前の料金は、正常分娩が58万円~(6日入院)、予定帝王切開が63万円~(8日入院)。値上げ後は、正常分娩が66万円~、予定帝王切開が63万円~となっており、正常分娩のみ、きっちり8万円値上げされている(料金はすべて税別)。

 岸田首相が記者会見で、出産育児一時金を50万円に増額すると正式表明したのは、同年12月10日。タイミングからして、この増額にあわせての便乗値上げであることは容易に想像できる。政策発表当初より、産院が値上げしてしまうと少子化対策としての効果が薄れてしまうことは指摘されていたが、それでも出産を考えている家庭にとっては家計の足しになると期待を寄せていたはずだ。

 先述の産院は全部屋、バス・トイレ・洗面台付きの完全個室ということもあり、もともと42万円を大きく上回る金額であった中、更に大幅値上げした形だ。当HPには料金改定についての告知もなかった。料金表には他にも、妊婦健診5000円、産後健診5000円程度(2週間健診)・7000円程度(1ヶ月健診)などの記載がある。妊婦健診助成の補助券が使えるものの、その上限額は自治体によって格差がある。補助券は14回分とし、上限額は約8万円~12万円という自治体が多いが、その上限額を上回ることがほとんどであると指摘されてきた。

 リプライや引用ツイートでは、
「入院日数が短い正常分娩の方が高いなんて異常」
「私が出産した産院も、HPを見に行ったら値上げしていた…残念です…」
「私が分娩予定している産院でも、HPに4月から値上げ予定って書いていた…ショック」
「分娩予約するときに、料金は予定なく変更する場合がありますっていう同意書を書かされたけど、こういうことだったのか…」
「どうせ医師会へのお布施なんでしょ」
「病院への補助金になっているだけで、まったく意味ない」
「予想はしていたけど、こんな国じゃ安心して子ども産めない」
「こども家庭庁の小倉大臣に、このツイートを見てほしい!」
といった投稿が殺到した。

 反響ツイートの情報を見る限りでは、値上げのタイミングは産院によって早くて2022年12月~2023年4月予定など様々あるようだが、いずれも増額にあわせた動きであることは間違いない。2万円~5万円ほどの値上げが多いようだが、中には8万円~10万円の値上げをしているという声もあった。

 一時金増額前となる3月までに値上げされてしまった場合がもっとも酷いケースだが、かといって急きょ他院で産むなんてことができるはずもなく、泣き寝入り同然で支払いを余儀なくされてしまう状況だ。「退院時に費用を聞かされ、思ったより高くても言い出せないし、明細を見てもよくわからない」「便乗値上げということがバレないように、今のうちに急いで値上げしたんだろうけど、あまりにも酷すぎる」といった悲痛なツイートも寄せられた。

「一時金なんかよりも、早く保険適用すべき」

 政策への不満や失望の声が続々と集まる中、「一時金なんかよりも、早く保険適用すべき」という切実な意見が多かった。不妊治療への保険適用については昨年4月から始まったものの、出産費用の保険適用については「慎重に考えなければいけない」と述べた岸田首相。まず出産費用の透明性を高めるために、HPなどで施設ごとの出産費用を一覧化して公表する方向で調整している。

 帝王切開は医療行為が伴うため、手術・投薬・検査・入院費用などにおいては健康保険が適用され、自己負担額は3割となる。しかし正常分娩は「病気ではない」とされ、健康保険・医療保険の対象外となり、すべて自費診療となってしまう。「自然分娩だって命がけなのに、保険適用外っていうのは納得できない」といったツイートも多く投稿された。

 出産育児一時金は、家庭に対しての出産費用の負担軽減として、1994年に創設された。スタート当初は30万円だったが、2006年に35万円、2009年1月に38万円、同年10月に42万円…と少しずつ増額されてきた。今回の増額8万円は、これまでの過去最高額。しかし、これまでにも増額にあわせた産院の便乗値上げは毎度のことのように行われてきており、反響ツイートでは「38万円から42万円に増額されたときも同じく値上げしていた。いつものイタチごっこ」「幼保無償化のときにも、保育料を値上げされた」「旅行支援が始まったら、旅館が値上げしているのと一緒」と嘆息されている。

 カナダ・フランス・ドイツ・イギリス・イタリアなどでは出産費用が無料であり、日本も同様にすべきだという意見も寄せられた。しかしイタリアについては日本よりも出生率が低く、2020年度では日本1.33人に対し、イタリアは1.24人。若者の有期雇用率の高さ、長引く不況や不安定な労働環境、晩婚化などといった社会環境が要因となっており、日本にも共通点が多い。なお、分娩費用が世界一高額といわれるアメリカの出生率は1.64人だが、分娩費用は約100万円~数百万円というから驚きだ。民間の医療保険が適用されるが、産院・保険会社・出産状況によっての差額が大きく、トラブルも多いといわれている。

 今回の産院の値上げについては、「近年の物価高やコロナ禍の影響で、産院の経営も大変だから、値上げは仕方ない…」という声もあったが、本来は家庭支援を目的とした政策である以上、制度の見直しが求められる。2023年1月より「出産・子育て応援給付金」として10万円クーポンがスタートしたが、一時的な支援ではなく、子どもが自立するまでの育児費用・教育費などといった長期的な経済支援が実現されない限り、少子化対策とは呼べないのではないだろうか。

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