ADHDやうつ病乗り越え…渋谷のリアルヒーローに! アラサー会社員、コスプレでゴミ拾いを続ける理由とは?

山脇 未菜美 山脇 未菜美

普段はただの会社員だけど、週末にはヒーローに変身する―。アニメに登場しそうな本物のヒーローが、渋谷の街で活躍している。名前は「戦士スラウザー」。金色の仮面と黒を基調にしたボディスーツ、マントを着用し、金色のトングでゴミを拾い集める。実は中の人は不登校も経験し、ADHDとうつ病を抱える27歳の男性会社員だという。休みの日を使ってまで約6年間もゴミ拾いを続ける思いを聞いた。

 

仕事でミス続き、パワハラも

2017年、渋谷ハロウィーンの翌日の清掃に初めて参加したスラウザーさん。タバコの吸い殻や酒缶、おう吐物…。拾っても拾っても、次の日にはゴミが増えることに衝撃を受け、ゴミ問題に関心を持ったという。コスプレを選んだのは、子どもの頃から戦隊ヒーローに憧れていたから。「ゴミを拾って社会貢献すれば、本物のヒーローになれるかなと思ったんです」と話す。地域の人に感謝されるほか、SNSで発信を始めると、「一緒にやりたい」と仲間が集まってきた。

毎週末、清掃活動をする一方で、私生活は浮き沈みが激しかった。新卒で入った会社ではミスを繰り返した。病院で診断されたのは、注意欠如・多動症(ADHD)だった。「授業の理解が遅かったり、仕事で部品の数を間違えてしまったり…。やっぱりな、と思うふしはありました。でも、会社の人に病気のことを『甘えだ』と言われたのはショックでしたね」。転職した会社では上司のパワハラも重なり、うつ病に。スラウザーの認知度が高まる中、22年10月から1年ほど活動を休んだ。

スラウザーは自信を持てる場所

「休んでいる間、生き方について考えました。病んでいるやつがヒーローなんて無理だな、とか…。体調が少しずつよくなって、逆に弱さを武器にできないかと前向きに捉えられるようになったんです」。病気をあえて公にし、ゴミ拾いを再開。共感や応援の声をもらうようになったという。

警察にも認知されるようになった。職務質問された若者が「あいつの方が怪しいだろ!」とスラウザーさんを指摘した際、警官が「あの人は良いことをしているから関係ない」と言ってくれた。「落とし物を交番に届けることはよくあるんですが、認めてもらえてうれしかったですね。ただ変身前…3歳の甥っ子に電話してデレデレしていたら職質されたことはありますが(笑)」

今年4月には、自身と同じような発達障害や精神疾患の人の役に立ちたいと、心理カウンセラーの資格も取得した。

でも、どうしてそこまで頑張れるのだろう…?「衣装を着ると、スイッチが入る感じがするんですよね(笑)まぁ…『偽善』だとも分かっています。自分がコンプレックスだらけで、活動で役に立ちたいという欲求を満たしているだけだから。自信を持てる場所が、スラウザーなんです」

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