「べんと~、べんと~に、お茶」JR米原駅の新幹線ホームで駅弁立ち売りが復活 昔懐かし「思わず買った」

京都新聞社 京都新聞社

 滋賀県米原市のJR米原駅の新幹線ホームで、懐かしい駅弁の立ち売りが復活した。新型コロナウイルス禍で利用者が減少する中、同駅と駅弁製造販売の「井筒屋」(同市下多良)が協力し、地域の活性化に一役買っている。ホームを歩き駅弁を売り込む声に乗降客の反応も上々。関係者は「昔の風情を感じてもらって列車の旅を楽しんでほしい」としている。

 「べんと~、べんと~に、お茶」。12月17日午前11時ごろ、新幹線上下ホームで井筒屋の林秀行取締役(55)が売り声を響かせた。黒の法被姿で駅弁やお茶を載せたケース「立ち売りかご」を提げて売り歩く。かごには滋賀の特産品を盛り込んだ「湖北のおはなし」やマスの姿ずし、近江牛の弁当が並び、乗客らが次々と買い求め列車に乗り込んだ。

 会社員の西沢万里子さん(52)は「昔、近所に立ち売りをやっていた人がいたのを聞いたことがあった。売り子さんの姿や声が懐かしくて思わず弁当を買った。駅弁は旅の気分を盛り上げてくれる」と喜んだ。

 JR東海関西広報室によると、東海道新幹線(東京-新大阪)の開業以来、ホームで立ち売り形式の駅弁販売は「おそらく初めて」という。今年10月8~10日に復活し、今回は2度目。米原駅では「コロナの影響で利用者が減り、お客さんを呼ぶアイデアがないかと考え、立ち売りを復活させた」としている。

 米原駅は東海道線と北陸線の接続駅。新幹線を降車すると、特急「しらさぎ」などに乗り換える乗客も多い。東京や北陸の各方面からは関西の玄関口にもあたる。

 井筒屋は東海道線開通の1889(明治22)年に同駅で駅弁の立ち売り営業を始めた。ピーク時の昭和30年代後半には販売員7~8人が在来線ホームで列車の到着とともに売り声を上げ、「飛ぶように売れた」(林取締役)という。1987年の国鉄民営化でJRとなったのを機に店舗形式の販売に移行、97年ごろに立ち売りの景色は姿を消した。

 今回、同社では岐阜県美濃加茂市の美濃太田駅で駅弁営業をしていた会社の協力も得て、木製の立ち売りかごも復刻させた。

 駅弁の立ち売り販売は来年以降も観光シーズンなどで実施する予定。米原駅の新幹線は「こだま」と一部の「ひかり」で1時間に4本程度が停車する。林取締役は「記念弁当や復刻弁当などを織り交ぜたい。駅と協力し、米原に降りればおもしろいことをやっていると発信して利用者を増やしたい」と話した。

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