嗚呼、昭和は遠くなりにけり。
鉄道の駅や空港で行き先や停車駅、出発時刻などを案内する通称「パタパタ」が次々と姿を消していっています。
阪急電鉄の岡本駅(神戸市東灘区)では、神戸線で唯一残っていましたが、今年2月いっぱいで取り外され、最新のLCD(液晶ディスプレイ)式に更新されました。兵庫県内の阪急では、あとは宝塚線の雲雀丘花屋敷駅(川西市)のみ。パタパタが残る駅でも、列車の接近を知らせる表示などはLED(発光ダイオード)が併用されています。
パタパタの正式名称は「多面式(フラップ式)行き先表示器」。上下二分割された板(フラップ)が反転し、行き先や停車駅、出発時刻などを案内します。反転するときに「パタパタ、パタ…」と無機質な機械音が響くことから、そう呼ばれています。開発者の名前を取って「ソラリー」とも呼ばれますが、「パタパタ」の方が通りはいいでしょう。
阪急のパタパタは外国製で、板(羽)は圧縮した紙とグラスファイバーでできているそうです。岡本駅では1995年6月から設置されていました。同駅で更新されたLCDの案内板は黒のベースに白文字とあって、パタパタを思い出させるフォルムに見えます。阪急さんも愛された存在(?)を意識されたのでしょうか(笑)。
昭和、平成、令和を生き抜いてきたパタパタですが、時の流れには逆らえず、異常発生時などにもスムーズに対応でき、多様な表示が可能なLEDや液晶などに取って代わられています。今年2月には京浜急行電鉄でも全廃されるなど、全国的にも希少になっていますね。地方私鉄に行くと、まだ見られるかもしれませんが。情報あればよろしくお願いします。
鉄道以外では、大阪万博開催を控えた1970年2月のターミナルビル完成時からパタパタが活躍していた大阪(伊丹)空港でも、ビルの全面改修が進んで消えつつあります。一部の搭乗ゲートなどではなお現役のようですが、もはや風前のともしびですね。
どこか懐かしいアナログな響きに、昭和の香りを嗅ぐ。大空にあこがれた幼き日の記憶がパタパタでよみがえる。それもこれも、ぜいたくな愉しみになってしまうのかもしれません。
(まいどなニュース/神戸新聞・長沼隆之)