「舞台は脆い」佐々木蔵之介がコロナ禍で痛感した演劇界の厳しさ 業界の先細りにも危機感

黒川 裕生 黒川 裕生

映画、ドラマ、舞台と相変わらず出演作が引きも切らない佐々木蔵之介。現在公開中のコメディ映画シリーズ第3弾「嘘八百 なにわ夢の陣」では、3度目のタッグを組んだ中井貴一や関西ゆかりの芸達者な俳優、コメディアンたちと泥臭くもどこか洒脱なやりとりを繰り広げ、確かな演技力と安定した存在感を印象づけている。1月6日〜9日には、大阪・森ノ宮ピロティホールで主演舞台「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」を上演。大学時代にのめり込んだ演劇を愛し、今も毎年欠かさず舞台に立ち続ける佐々木だが、コロナ禍では自身の感染で公演が中止になる経験も味わった。「(舞台は)脆いメディアだと痛感した」と漏らす佐々木に、コロナ禍で演劇を続ける難しさについてあらためて話を聞いた。

「舞台には、映画やドラマとは別種の緊張感があります。出演者やスタッフに1人でも何かあれば全部飛んでしまうわけですから、舞台の方が断然シビアですね。どれだけ稽古していても関係ないというのが本当にキツい。なんとも脆いメディアだなと思います」

コロナ禍で、エンタテインメントは大打撃を受けた。とりわけ、演劇や音楽などステージでのパフォーマンスを主とするライブエンタメ業界のダメージは深刻で、関係者の体調不良などによって公演が中止や延期になるケースは今も後を絶たない。

「演劇なんて客席の7割、8割入ってもまだトントンというくらいお金にならへんのに、制限が厳しい時は『客席は半分空けて』とか『当日券を売るのは禁止』とか言われて、コロナ禍に舞台をやるのはあまりにもリスキーだと思いました。2、3年前から劇場を押さえて、それができないとなったら、もう真っ赤っかですからね」

「コロナ禍以降、役者を大勢出すのは難しいので少人数の作品に変更するなど、実は演目も相当考えられています。地方公演も、上演される作品数も、減りました。となると、舞台に関わる人の数も減りますから、これからは層が薄くなり、演劇界が先細りしていくリスクまで…。誰か体調不良が出ても、そのシーンは後で撮影できる映画やドラマに比べると、舞台は断然厳しいというのが今の実感です」

「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」の演出は、ルーマニアを代表する舞台演出家のシルヴィウ・プルカレーテ。佐々木がプルカレーテと組むのは、「リチャード三世」(2017年)以来2回目という。

「僕とは2回目ですが、彼が日本で舞台の演出をするのはこれが3回目。僕が出ていない前回は、彼は来日後にずっと隔離されていて、その間はzoomで稽古していたらしいんですよ。そんなん、できるわけがない!隔離期間が終わってから、わあわあ言いながら演出したらしいですが、きっと大変だっただろうと思います」

「今回もまだ色々な制限はあります。でも彼が『なんとしても客席降りをやりたい』と言って、東京公演では役者がマスクを着けて客席降りをやりました。モリエールが17世紀に書いた話だから、マスクを着けるのは本来おかしいのですが、コロナ禍だからこその芝居だとお客さんも理解してくださって、劇場がすごく熱くなりましたよ」

日本では一向に出口が見えないようにも思えるコロナ禍だが、それぞれの分野で、明るい兆しは少しずつ表れている。

「守銭奴 ザ・マネー・クレイジー」は1月6日〜9日に大阪・森ノ宮ピロティホール、1月14日に高知県立県民文化ホール(オレンジホール)で。

映画「嘘八百 なにわ夢の陣」は全国で上映中。

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