目の前のバス、すぐ発車する?まだ大丈夫? そんな迷いを一発で解決する行先表示器の一工夫 関西でじわり増加中

黒川 裕生 黒川 裕生

バス停にやって来てはみたものの、目の前のバスがすぐ発車するのか、それともまだ余裕があるのか—。それがわからず、迷ったことのある人もいるのでは。関西ではバス真正面(フロントガラス)の上側にある「行先表示器」に発車時刻を表示する取り組みが、10年ほど前から少しずつ広がってきている。本当にちょっとした工夫なんですけど、これがまあ、あるとすごく助かるのです。

最初に始めたのは京阪バス(本社・京都市)で、2003年から。GPSなどを利用してバスの位置情報を収集し、バス停の表示や携帯電話、パソコンなどにリアルタイムで情報提供する「バスロケーションシステム」の導入により、可能になったという。「要するに、“バスのオンライン化”だと考えてください」と担当者。電子スターフ(運行指示書)に登録されたダイヤ情報と連動しており、運転士が自分の担当する系統を選択すると、発車時刻が表示されるという仕組みらしい。

京阪バスの事例を参考に、大阪の高槻市バスも2018年から、そして神戸市バスは2021年から発車時刻の表示をスタート。利用者からは「わかりやすい」とおおむね好評で、利便性の向上にもつながっているようだ。

全国的に珍しい取り組み

公共交通機関に詳しい龍谷大学の井上学教授(交通地理学)に話を聞いた。

—この取り組みが広がっていった経緯を教えてください。

「最初に始めた京阪バスは、高槻市内でも運行されています。このため高槻市バスの担当者が京阪バスの発車時刻表示を見かけ、利用者にとってわかりやすい取り組みだと思い、了解を得た上で採用しました。そして、この取り組みを知った神戸市バスの担当者も、高槻市バスと同様に共感して採用したという流れのようです」

「なお、他事業者でやっているのは東京BRTくらいで、実は全国的に見ても非常に珍しい取り組みだと言えます」

—行先表示器がLEDになったことも背景にあるのでしょうか。

「そうですね、LED化で可能性がずいぶん広がりました。近年はフルカラーLEDも普及しており、より多彩な表示が可能となっています。その中で、例えば都営バスが行っている祭事におけるバスの迂回運行表示(通常のバスの経路とは異なる経路を注意書きとともに表示)は、他地域でももっと採用されていいのではと思います」

—有名アーティストのコンサートなど、地域で開催される大きなイベントに合わせたメッセージを表示する取り組みも、SNSなどでよく話題になっていますね。

「私が交通部の会議の委員を務めている高槻市バスでも、『祝・ご入学!』『祝・ご卒業!』『祝・成人!』などのお祝いメッセージがありますし、お正月には『謹賀新年』も表示されます。また京都市バスでは、市営交通110周年を記念してキャラクターを表示していました。いずれも、地域に密着したバスならではの取り組みではないでしょうか」

—毎日見ているバスも、実は日々変化しているのですね。公共交通機関を研究していて、あらためてどんなところに面白さを感じますか。

「バスは鉄道と違い、需要に応じて路線が変化する点が、研究対象としての醍醐味を感じます。みんなで乗り合うことで大量輸送を可能とするバスの本質は昔から変わりませんが、今回のようなバスの行先表示器の多彩な表示だけではなく、バス車内モニター案内で鉄道の時刻掲示を行う事業者もあり、日々進化しています」

「『標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)』と呼ばれるバス停や路線、時刻などの情報を共通のフォーマットで整備し、オープン化することで経路検索や地図上での表示がより便利になる取り組みも進んでおり、今後も路線バスの進化に期待しています」

うおおお、興奮してきた!ちょっとバス乗ってくるわ。

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