「不登校がこのまま永続的に続くのではないか」と慌てないでほしい 不登校からの進学受験

松田 義人 松田 義人

 

2021年に文部科学省が発表したデータによると、全国の小中学校の「不登校」生徒数は19万6127人。さらに高校生の「不登校」は5万人前後いると言われており、社会問題の一つになっていますが、これに呼応するように、出版業界では「不登校本」というジャンルがあります。

こういった本は「不登校になった当事者がうまくいったというサクセストーリー」「不登校になった子を持つ親の体験談」「不登校に対応する特定の塾や学校を紹介する」といった「親が持つ不安を解消する」ことを優先し編まれたものが多いです。

他方、今「不登校」の子どもにとっての重要課題の一つは「学業」に伴うもので、この点にフォーカスし紹介した本は、これまでありませんでした。

そんな中で「不登校からの進学受験」に特化した画期的な本が刊行されました。『不登校からの進学受験ガイド』山田佳央・著(ユサブル)という本です。

 

「不登校」の原因は、「いじめ」の約40倍の「学業不振」だった

本書の冒頭では「そもそも子どもたちが不登校になった原因は何か」に言及しています。

「そもそも不登校の原因はなんだと思いますか? 『いじめ』や『教師との関係』というイメージが強いのではないでしょうか。しかし最近のデータでは中学生の不登校原因で『いじめ』は全体の0.6%、『教師との関係』は2.5%、『学業不振』は24.0%と、学業不振による不登校は『いじめ』の約40倍になります。

<中略>

もちろんこのデータがどこまで正しいのかという問題もありますし、不登校の原因はわからないことも多く、この他にも色々な背景や事情があります。そして解決策は十人十色で簡単に解決することは難しいのです。

ただ場合によっては、いますぐできる選択肢のひとつとして『学力の育成』を通した『受験』で不登校を解決することは有効です。さらに年齢が低ければ低いほど『受験』という選択で『不登校』への脱出が近道になりえることを本書で知ってほしいと思います

<中略>

ある教師と会わなくても違う教師と合う可能性がある。
ある友人と会わなくても違う友人と合う可能性がある。
ある学校と合わなくても違う学校と合う可能性がある。

ぜひそう思い続けてください。大人であれば、ある会社と合わなければ、違う会社に転職することができます。しかし子どもたちはそれがしにくい状況にあります」

こういったことを前提としながら、著者が本書で伝えたいことは大きくまとめて以下の5つになると言います。

1.「不登校の問題」は「受験」と「学力」で解決できる
2.教育とは異なる業種も経験してわかった教育界の問題点
3.不登校で悩む親子それぞれの課題を整理する
4.不登校時が選べる進路に関して正しい知識を知っておく
5.不登校になった子に親が抱く感情を整理する

進学受験を通して「不登校」そのものの解決も目指す

言わば「不登校」の子どもたちにとって欠かせない課題の一つの「学力」を逆手に取り、進学受験を通して「不登校」そのものさえも解決していくことを目指す一冊です。8つに章立てされた各章のタイトルは以下の通りです。

・「受験」が不登校を解決した
・不登校だからできた受験の成功実例
・不登校問題の現状を整理する
・不登校の子が通える教育機関
・不登校からの「受験」ガイド
・公立学校が抱える不登校の構造的要因
・不登校の子に合う学校を見抜くポイント
・教育機関の選び方と具体的な指導方法

学力があれば好循環が生まれる日本の受験制度

冒頭でも触れた通り、これまでに刊行されてきた、いわゆる「不登校本」とは一線を画していることに加え、著者ならではの優しい視線と豊富な知識、メソッドが惜しみなく紹介された本書。制作・刊行に至った経緯を著者・山田佳央さんに聞きました。

 

「私は、学校や大手塾に合わない子を指導する個別指導塾を14年運営しております。その中には学校に行っている子も行かない子も分け隔てなくいます。

子どものアイデンティティについて、『今の学校に行けないのだから』といって『進学先に行けない』と思う親は多くいらっしゃいます。しかし、当塾の生徒を見てみると小学生であれば80%以上の子どもたちは中学受験を経て、合格した進学先に進学し、復学します。

これは何故か?

これは『学校と家と塾では子どもの性格や会話の内容が変わる』……つまり性格を使いを分けているという考え方です。

この考えが『不登校』の子にも当てはまるのではないかと思います。『A校には行けるが、B校には行けない』……大人でも所属している会社と肌が合わず辞める方もいる。そして転職先では環境も合い、活躍できる人たちと同じ境遇なのではないかと自分の体験から感じたのです。

もちろん『不登校』は精神的な疾患だったり、家族や経済的な事情など色々な背景があるかと思います。しかし、問題をあまり複雑化させず、まず子どもの成長を学力面から支える。そして学力がつけば選択肢も増える。結果、自分に合いそうなユルい学校を選ぶ。こんな主導権がを子どもに与えるのです。学力があれば好循環が生まれるのが日本の受験制度です。

このように本書は『不登校』で悩む親子それぞれの課題を整理することが1つの目的でした」(山田さん)

ただし、この複雑に絡み合う「不登校」の要因、「学力」「進学受験」といった問題を整理し、一冊にまとめるには相当な時間がかかったとも。

「1年3ヶ月という月日を費やしました。出版社・ユサブルの社長が自ら編集をしてくださいましたが、当初言われたことは以下の2点です。

1つは『宣伝を決して入れず、第三者、子どもを持つ親の視点で書くこと』

2つ目は『10年残る書籍であること』

書籍というとどうしても、自分や自社でのやり方を宣伝したくなってしまうものですが、そうしないようにタイトルにもあるように`ガイド役』に徹し、より本質をついた内容に努めました」(山田さん)

 

最後に改めて読者へのメッセージをもらいました。

「考えてみると、大衆とは、自分の中に判断基準を持たず、人に合わせようとする人のこと。つまり『他人の基準』で生きている人達です。人に合わせた人生が果たして良い人生であるかどうかは私にはわかりません。

しかし私は19歳の浪人時代に基準を『他人』から『自分』にしました。人と比較することなく、人の意見に左右されることなく、自分に納得感をベースにした人生は『豊か』です。自分は自分の人生を、自分の基準を持って生きていきたいと思います。あなたは、何を基準に生きているのか? この本を機に考えていただけると幸いです」(山田さん)

『不登校からの進学受験ガイド』山田佳央・著(ユサブル)

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