兵庫県西宮市にある、高野山真言宗「鷲林寺」(じゅうりんじ)の住職、藤原栄善さん(@eizen_san)のツイートが話題です。今から10年近く前、「鷲林寺」の近くに住む男性から住職のもとに、「供養」をしてほしいという相談があったそうです。
「お寺の近くに住むおじさんが、雉(キジ)の供養をしてほしいと来られた。土手の草焼きをしていたが、全体が焼け終わった後、ふと見ると黒いものが残っている。近寄ると、雉の母鳥が羽をいっぱいに広げて死んでいた。鎌の先でひっくり返すと、その下で雛鳥が5羽元気な声で鳴いていた。身代わりとなった母鳥の実話です」
さらに住職は、「おじさんはびっくりされてかなり落ち込んでおられました」とツイート。命懸けでヒナを守った母の愛と、「供養」を申し出たおじさんについて、「鷲林寺」の住職、藤原栄善さんにお話を聞きました。
「供養」を依頼された方も素晴らしい
そして、「一心に拝ませていただきました」と、住職が母キジの供養をしたことを報告すると、リプ欄には多くのコメントが寄せられました。
「感動的なお話 胸を打ちます」
「母の愛とは偉大でありがたく仏様の心に通じるものがありますね」
「供養を依頼された方も素晴らしいと思います。誤って殺した雉を憐れに思い。雛をかばい焼け死んだ母鳥がどうか救われますように」
母鳥が守ったヒナは……
その後、「野焼きで犠牲になった雉のヒナ鳥は、おじさんが母鳥の代わりに大きくなるまで育ててやろうと決心して家に持ち帰り、大きくなってから自然に返したと聞きました」と、ツイートしていた住職。母キジの姿を通して知る「子供に対する無条件の親の愛」について、住職にお話を伺いました。
人も動物も「親が子を思う無条件の愛」は同じ
ーー「おじさん」からキジの供養を…という話をお聞きになった時のお気持ちは?
「驚きました。実際にキジを持って来られたわけではなく、檀家さんでしたので、こんなことがあったので拝んでほしい、とのご依頼でした。母の愛はすごいなぁと思いました。投稿には数年前と書いていましたが、実際は10年以上前の話だったかもしれません」
ーーそんな以前のお話だったのですね。なぜこのタイミングでご投稿を?
「当時、私の母は健在でしたが、2年前に母が亡くなり、亡くなってから気づくことが多く、母のことを思い出す度に、私に対する母の思いに感謝する日々です。もっと親孝行をしておけば良かったと思う気持ちから、親が子供を思う無条件の愛は、人間でも動物でも同じであるということをお伝えしたくて、キジの話と重ねて書いた投稿でした。実際のところ、こんなに反響があるとは思っておりませんでした。驚いております」
大事なのは「懺悔」の気持ち
ーーおじさんはその後、残されたヒナたちを巣立ちまで育てられたそうですね。
「農家の方だったのですが、鶏を飼っておられたので、空いていた鶏小屋でしばらくヒナを飼っておられたと記憶しております」
ーー鶏を飼っていらしたのなら、母キジの行動もよく理解していらっしゃったでしょうね…。リプ欄には、「よく確認すべきだったのでは?」と、おじさんを責める声もありましたが、むしろ「供養」を申し出たおじさんの行動から、犯した過ちをどう省みるか?ということを学んだ気がします。
「犯した罪に対してはまず、懺悔をすることに重きを置いております。これは仏教だけでなく、宗教全般で説かれていることではないでしょうか。仏教では礼拝行といって、仏様の前で五体投地を何度も行い、自分が犯してきた罪を懺悔する布薩という修行があります」