大迷惑「ビワコムシ」大量発生 滋賀県民のゾッとする季節がやって来た

京都新聞社 京都新聞社

 ごく一部の滋賀県民にとって、深まる秋はぞっとする季節に違いない。大津市の琵琶湖岸で、今年も「ビワコムシ」が大量発生した。体長1センチ弱の黒い羽虫がマンションや街灯の明かりに大挙して飛来し、ベランダの洗濯物が汚れたり、大量の死骸が出たりする事態が続出。大手ファストフード店も夜間は持ち帰り限定での営業を余儀なくされるなど、県民生活に影響が出た。

 ビワコムシの正式名は水生昆虫の「アカムシユスリカ」。幼虫時代は琵琶湖底の泥の中にすみ、毎年この時期に羽化する。繁殖のため陸地に上がって交尾し、メスは湖に戻って産卵する。人を刺すことはないが、夜になると光に集まる習性があり、部屋やベランダに入り込んでは住民たちに迷惑がられている。

 「ビワコムシの大量発生による客席メンテナンス実施のため11月29日まで18時以降はお持ち帰りのみの営業とさせていただきます」。今月下旬、琵琶湖岸にある大手ファストフード店に掲示された張り紙の画像がツイッターに投稿され、話題を呼んだ。同じような立地の商店はどこも似た苦労をしているらしく、出入り口の前で扇風機を動かし、虫の侵入を防ごうと奮闘するコンビニもある。

 琵琶湖の大津港周辺は、特にビワコムシの飛来が目立つ地域。深夜に近辺を歩くと、京阪島ノ関駅の切符売り場には無数の黒い粒が壁一面に広がっていた。琵琶湖ホテル前の街灯を見上げると、大量のビワコムシが群がり、まるで舞い散る雪のようだ。

 市民生活への影響はどうか。湖岸から約300メートル離れたマンションに住む女性(40)は「洗濯物にビワコムシがへばりつくので、ベランダに干せなくなった。毎年のことだけど全然慣れないし、本当に弱っている」と話す。

 ビワコムシの寿命は短く、次々に飛来しては死んでしまうので死骸の処理も大変だ。市内のマンションの管理人男性(69)は「つぶれた虫を拭き取るのにとにかく時間がかかる。死骸はくさく、近辺のマンションではビワコムシの掃除が嫌で管理人を辞めた人がいるとも聞く」と語る。

 煙たがられるビワコムシだが、近年は琵琶湖の水質改善が進み、生息数は30~40年前の10分の1ほどに激減している。

 県琵琶湖環境科学研究センター(大津市)の専門研究員井上栄壮さん(49)は「例年通りなら発生時期は12月中頃までだろう。新しく移り住んだ人たちは驚くかもしれないが、昔からの住民にとってはいつもの光景。ビワコムシも琵琶湖の生態系を支える大切な存在だということを知ってもらえたら」と話している。

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