指定地以外で「たき火やめて」→山林を壊滅させるツチクラゲ発生の原因に 迷惑キャンパーへの注意喚起「必ずバレます」

中河 桃子 中河 桃子

「これからキャンプ、登山シーズンになりますが、キャンプ用地など指定された場所以外での焚き火(特に林地)は絶対にやめてください。ツチクラゲという針葉樹の病害菌が焚き火をきっかけに発芽し、最悪の場合林まるごと壊滅します。これは迷惑キャンパーによる焚き火跡の状況です」

「拡散希望」としてTwitterに投稿したのは「キノコ盆栽家」の渋谷卓人さん(@kinoko_bonsai)。キノコを発見した状況や、このツチクラゲについて専門家にも話を聞きました。

リプライには、「ツチクラゲ知りませんでした」「山火事だけじゃなくてこういうのもあるんですね勉強になります」「林を壊滅させるほど危険な存在なのですね・・・」「初めて知った」といった驚きや「自然好きとして黙って見過ごせはしませんね」「こういうルール、マナー守れないなら絶対キャンプする資格ないですよね」などの怒りの声が。

また、「こんな菌類がいて、焚き火や山火事がキッカケで大きな被害が出ることがあるなんて知っている人はどれくらいいるんだろうか? 山中で焚き火をするのは気持ちいいからで、知っていたらやらない人がほとんどだと思う」と、積極的な注意喚起を呼びかけるコメントもあり、大きな反響を呼びました。

ちなみに、たき火跡は「燃やした後の炭などを取り除き証拠隠滅をはかった形跡がありますが、ツチクラゲの子実体が発生したことにより「ここで焚き火をやった」事実が完全に明らかとなっていました」と、バレないようにもしていたそうです。

キノコの生態に子どもの頃から夢中だという渋谷さんは「約3~4日しか観察ができないキノコを何とか再現できないか」との思いから、盆栽のように鉢で再現する作品「盆栽きのこ」を発表し続けています。そんな渋谷さんに、問題のツチクラゲを発見した時の状況についても聞きました。

「迷惑キャンパーの行為をきっかけに見つけてしまいました」

――どのような状況で発見されましたか。

「登山道の途中にある開けたエリアで発見しました。当日は曇天で、気温23度程度だったと思います。そこは観光スポットとしても有名な場所で、たき火は禁止されています。こちらに登ったのは7回程度ですが、そのうちたき火の跡と不法投棄を一度見つけたことがあります。もしかしたら以前にもたき火をする客がいたかもしれません」

――ツチクラゲの生態を知った時の心境は?

「図鑑でツチクラゲの項を見たときです。そのときは“ああこういうキノコもいるんだな”という認識でした。見てみたいとも思いましたが、たき火跡や山火事という特殊な条件でしか生えないのでなかなか難しいだろうと考えていました。

ところが、上記のような条件でしか見られないキノコを、迷惑キャンパーの行為をきっかけに見つけてしまいました。怒りや悲しみ、絶望も感じました。以前にもたき火をする人間がいたことを考えると、積み重なった迷惑行為の末に今回の件があったと思います。何も状況を知らず立ち去ったキャンパーに対して、事態の重さが伝わってほしいという気持ちがありました。」

――禁止されている場所でのたき火について、伝えたいことは?

「許可されない場所でのたき火には思わぬリスクが潜んでいるということを知ってほしいですね」

「たき火や山火事跡に発生しやすく、跡地を起点に病害が広がります」

ツチクラゲとは、子嚢菌門(しのうきんもん)というキノコの仲間。そこで詳しい生態について、子嚢菌門が専門の「国立科学博物館」植物研究部長の細矢剛先生に話を聞きました。

「ツチクラゲはチャワンタケ目ツチクラゲ科に所属するキノコです。地面の上に平たく広がり、その下には、束になった糸状の菌糸が地中に伸びています。地球上の温暖な地域に広く分布しており、特にアカマツやクロマツのほか、スギ、ビャクシン、ハギなどの樹木周辺で見られます。

ツチクラゲの胞子は通常の温度帯ではおとなしくしていますが、35度以上になると発芽し、マツを枯らしてしまう「つちくらげ病」を引き起こします。そのため、たき火や山火事跡に発生しやすく、これらの跡地を起点に病害が広がることが知られています。

海外では、ドイツやフランス、イギリス、アイルランド、ニュージーランド、フィンランド、オランダ、スウェーデン、米国、カナダなどに多く、特に北欧での被害が目立っています」と、実際に森林に影響を与えていることを教えてくれました。

ツチクラゲを見つけた時の対処法について、渋谷さんは「個人では対処が難しいため、地方自治体に協力をお願いする方法が一番よいかなと思います」と話していました。また、今回のツチクラゲが見つかった市では、現地を確認のうえ、たき火禁止の看板を設置することになったようです。

ツイートでのリプライには「ツチクラゲを食用すればよいのではないか」という意見もに出ましたが、細矢先生によると「毒キノコとしては知られていませんが、毒がないとも言い切れませんので、食べないほうが良いでしょう」とのことです。

前提として、キャンプが禁止されているエリアでのたき火はルール違反。森林や山中でのたき火も火事の危険があるためやめましょう。「たき火禁止の看板」や「たき火してはダメと言われなかった」としても、その土地の所有者や管理者がたき火を禁止している場合もあります。今回のように思わぬ被害をもたらす可能性もあるので、自然を大切にする気持ちでアウトドアを楽しみましょう。

Twitterアカウント:@ kinoko_bonsai
きのこ盆栽Twitterアカウント:@ mushroom_bonsai
国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/

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