区間急行、区間快速といったように、「区間」が付く列車の種別は全国に数多く存在しますが、「区間特急」は阪神電気鉄道の阪神本線にしか存在しません。一体、どんな列車なのか実際に乗車することにしました。
運行開始から40年以上が経つ区間特急
区間特急は1981年に芦屋~梅田(現大阪梅田)間にて運行を開始しました。もともとは阪神本線の南側にある芦屋浜団地、武庫川団地の入居者増加に対応するために設定されました。
運行開始時は平日朝ラッシュ時梅田行き1本のみで、途中停車駅は西宮・甲子園でした。現在も平日朝ラッシュ時の運行に変わりはないですが、御影発大阪梅田行き7本に増えています。途中停車駅は魚崎・青木・深江・芦屋・打出・香櫨園・今津・甲子園・尼崎・野田です。
快速急行に抜かれる区間特急
御影駅から7時57分発の大阪梅田行き区間特急に乗ることにしました。区間特急は1番線に停車し、神戸三宮方面から来た普通と連絡します。しかし御影駅からですと大阪梅田駅には後の直通特急が先着するため、区間特急に乗り換える客はそれほど多くありません。
空席もある状態で7時57分に御影駅を発車。住吉駅を通過すると、魚崎駅から香櫨園駅までは各駅に停車します。
青木駅では快速急行と直通特急の通過待ちを行います。快速急行は特急よりも格下の種別ですから、特急系種別を軽快に追い抜くシーンは珍しいといえます。青木駅では5分停車します。
深江駅からは区間特急が大阪梅田駅に先着することもあり、多くの通勤客が乗車します。また沿線には高校も多く、高校生の降車も目立ちました。
クライマックスは西宮駅の通過
香櫨園駅までは窮屈な走行が続きましたが、ここからはいよいよ本領発揮。香櫨園駅を発車すると、直通特急や快速急行などが停車する西宮駅を通過します。区間特急は西宮駅を通過する唯一の種別です。
8時22分に甲子園駅を発車する頃には車内は満員状態。通勤電車らしくなり、いよいよ尼崎市に入ります。尼崎市に入るとスピードを上げ、駅を軽快に通過します。先ほどの各停区間と比べると嘘のようです。
8時27分に阪神なんば線の分岐駅である尼崎駅に到着しましたが、あまり乗降はありませんでした。同駅到着3分前に発車する大阪梅田駅先着の区間急行があり、その影響が大きいものと思われます。
尼崎駅を出ると野田駅に止まり、8時38分に大阪梅田駅1番線に到着。利用客のほとんどが通勤客と言うこともあり、足早に駅改札を出ていました。
同一列車に混雑が集中しないように
区間特急を見てわかるとおり、阪神本線では一つの列車に混雑が集中しないように工夫しています。そのため区間特急は乗降客が多い主要駅の西宮駅を通過するのです。
乗客から見た区間特急のメリットは区間によって異なります。区間特急は御影駅始発のため、御影駅はもちろん春日野道~石屋川駅間の普通しか止まらない各駅の利用者にとっては確実に座れる優等列車といえます。
また青木駅からは大阪梅田駅に先着する優等列車であり、対JR神戸線対策という意図も見えます。たとえば香櫨園駅は2006年に区間特急の停車駅となりましたが、翌年には近くにJR神戸線のさくら夙川駅が開業。少しでも乗客減を防ぐために、大阪梅田先着の列車を停車させたわけです。
種別の移り変わりが激しい阪神本線ですが、今後も区間特急は平日朝ラッシュ時の救世主であり続けることでしょう。