2021年9月に長野県塩尻市の酒蔵兼自宅で妻の希美さん=当時(47)=を殺害した殺人容疑で、自民党の県議である丸山大輔容疑者(48)が28日に長野県警に逮捕された。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は29日に現場を取材し、当サイトに対して見解を語った。
昨年9月29日、家族が最後に姿を見たという午前0時から、遺体が発見された午前6時45分の間に、希美さんは殺害されたとみられている。死因は首を絞められたことによる窒息死だった。
希美さんの夫である現職の県議(酒造会社も経営)は、被害者家族としてメディアの取材に対して「犯人はどんな心境でそういうことに至ったのか」「犯人は自分から早く出てきてほしい」「真相を早く知りたい」などと思いを吐露してきたが、事件から1年2か月後、その〝悲劇の夫〟が妻を殺害した容疑者として逮捕されるという急転直下の動きに衝撃が走った。
小川氏は「昨年の事件発生後、(丸山容疑者が)テレビであまりにも淡々と話していることに違和感があった」と指摘する。捜査は水面下でどのように進んでいたのか。
小川氏は「捜査員は人数を減らすことなく、延べ4万人以上を費やし、決め手がない中でも地道な捜査を続けていった。現時点で警察の発表は『凶器が見つかっていない』ということですが、逆に考えると、『凶器が見つかっていない』ということは『手』で首を絞めたということではない、何らかの物を使ったということ。具体的には『ひも状の物』と推測されていますが、そうした痕跡、索条痕(※ひも状のもので絞められた痕跡のこと)等がご遺体に残されていたのだと思います。凶器を探すため、県警は今年10月に現場となった丸山容疑者の自宅に家宅捜索に入っている。合わせて、ゲソコン(※犯行現場に残された足跡を意味する警察隠語)や、(丸山容疑者が乗った)車の移動など、捜査を積み重ねて今回の逮捕に至った」と説明した。
さらに、同氏は「自宅には夫婦と子どもさん2人の4人で住んでいるが、人が家にいる、この時間帯に入る泥棒は空き巣ではなく、『忍び込み』の手口。当時、付近で空き巣の発生が散見されていたが、全く違う手口。ご主人がこの日いないことを知っていて、行き当たりばったりの物取りの犯行ではなく、恨みのある顔見知りによる犯行の可能性が強いと当初はみられていた。金庫に手を付けず、その他も物色の跡はなかった」と補足した。
同容疑者は事件当時、長野県議会出席のため長野市内の議員宿舎に滞在していたと供述している。殺害された時間帯に対してアリバイ作りをしていた可能性について、小川氏は「そのことが事実か事実でないかは別にして、(宿舎から自宅まで)丸山容疑者の車両が往復しているわけです。被害者は亡くなってすぐに発見されているので、検視の段階で、ご遺体の死後硬直等から、殺害されたのが午前2時か、3時か、4時か…と1時間単位で特定できる。例えば亡くなったのが午前4時と分かった段階で、車の通った時間を絞り込んで、Nシステム(※走行中の車のナンバープレートを読み取るシステム)を使ったり、ナンバーが分かりづらくても、防犯カメラの映像を解析できる技術もある」と、そうした〝工作〟には意味がない現状を解説した。
また、小川氏は「今年4月から丸山容疑者は県議会の『総務企画警察委員会』の委員長に就任しているのです。現在、県議2期目で委員長です。毎月、定例会があり、警察側からは本部長や刑事部長、殺人事件があれば捜査一課長などが定例会に出席します。委員長は直接、県警の刑事部長や捜査一課長に事件の進ちょく状況を聞くことができる立場にある。丸山容疑者が実際に聞いていたかどうかはまだ分からないが、そういうことが可能な立場にあった。それまで地元の復興など産業部門の副委員長をしていて、今回、総務企画警察委員会には委員ではなく、いきなり『委員長』になっている。事件の情報を得るために進んでその立場になったかどうかは分かりませんが、そういう役職にあったことは事実です」と付け加えた。