公共標識の翻訳の誤りがSNS上で大きな注目を集めている。
きっかけになったのは経営コンサルタントでジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社創立者社長のロッシェル・カップさん(@JICRochelle)が投稿した
「この英語は全然ピンと来ないのであまり役立たない。日本語をそのまま翻訳しようとするより、読む人にとって何が最も分かりやすいかを考えるべきです。Not an exit! This gate only for transfers.のような感じの方が良かったと思います。#泣いちゃ英語」という指摘。
カップさんが指摘するのは「のりかえ専用改札口」の案内書きに書かれているのは「The dedicated transfer ticket gates」という英語。たしかに単語の組み合わせとしては成立するのだが、日本の鉄道事情を把握していない外国人にこれがどの程度伝わるのだろうか。
カップさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「ひょっとして、自動翻訳でしょうか?大阪メトロでは、堺筋線を "Sakai Muscle Line" と表記してたとか…ここまで行くと、(英語をかじった日本人向けの)大喜利ですが…」
「というか、定冠詞theがあるあたりから違和感を感じる…。一番いいのは、大江戸線方面にはTransfer to Oedo Line only, 逆方面はTransfer to Ginza and Hanzomon Lines onlyと書けばいいだけなんですけどね。」
「あるビルのエレベーターに(感染対策)、『会話はお控えください』という日本語の下に、Talk shop elsewhere!と書いてあるのは、英語専門職的には、おーっ、と思いました 標識には、直訳ではなく、一瞬でわかる英語表現を使うことが肝要と思います」
「JR新宿駅の南口の小田急線のりかえ口は、"Transfer to Odakyu Line (Only for Changing Trains)"とか"Not Exit"と表示されていますね。」
など数々の共感の声が。また
「乗り換え専用と書いてあるので〈transfer only>でも、通じるのではないかと。」という声に対してはカップさんから「それで通じると思います。しかし、Not an exit を追加するのはもっと親切だと思います。」と回答があった。
今回の投稿についてカップさんにお話を聞いた。
ーー公共機関などでこういった意味の伝わりにくい英語表記に出会うことは多いのでしょうか?
カップ:結構あります。通過列車のことを「PASSAGE」と表記していることがありましたが、これではまったく伝わりません。「Train does not stop at this station」とすべきです。
また再入場できないことを「You can not re-admission」と表記していることもありましたが、この場合は「You can not re-enter」あるいは「No re-entry」「No re-admission」が正しいです。
ーーこういった表記の翻訳をする際に心がけるべきポイントについてご意見をお聞かせください。
カップ:自動翻訳をそのまま使わないことです。特に看板にあるような短い文章には自動翻訳は向いていません。できればプロの翻訳者に依頼するか、それでなければ必ずネイティブ・チェックをもらうべきだと思います。
こういった公共サインは日本語を直接的に訳すのではなく、何が一番分かりやすいかという観点で、ネイティブにピンと来るような文章を考えるのがいいでしょう。乗り換え、通過電車など日本独特の電車文化に慣れていない外国人もいるので、そういった背景情報がなくても理解できる英語になるように努力していただきたいです。
ーーこれまでのコメントや反響へのご感想をお聞かせください。
カップ:「The」や「dedicated」の使い方に当惑したという人が多かったです。私と同様、あの英語では分かりにくいと思った人が大半のようです。「実は分かりやすいですよ」と主張する人もいたけど、その人は外国人観光客の立場で考えていないのかなと思いました。
◇ ◇
伝える相手の立場に立った案内は、外国人を相手とするケース以外にも欠かせない配慮。せっかくの案内が相手を混乱させることにつながらないようにしたいものだ。
なお英語の正しい使い方についてはカップさんの著書「英語の品格」(集英社インターナショナル)、「英語の品格 実践編」(アルク)がお勧め。日本人が犯しやすい英語への勘違いを正し、ビジネスにも日常生活にも役立つ英語力を身に付けられる良著なので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。
ロッシェル・カップさん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/JICRochelle
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