働いてみたい国・地域として「日本」を希望する人が減少傾向―。そんな調査結果を株式会社パーソル総合研究所が発表しました。日本を含むアジア太平洋地域(APAC)および、欧米地域を含めた世界18カ国・地域に3年以上在住し、就業している20~69歳の男女(国・地域ごとに約1000人)を対象とした調査で、働いてみたい国・地域の1位は「アメリカ」だったそうです。
「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」と題して、2022年2月~3月の期間に実施されました。なお、調査対象国は、日本(東京・大阪・愛知)、中国(北京・上海・広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港、タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ・ホーチミンシティ)、インド(デリー・ムンバイ)、オーストラリア(シドニー・メルボルン・キャンベラ)、アメリカ(ニューヨーク・ワシントン・ロサンゼルス)、イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン・ミュンヘン・ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム)となっています。
まず、コロナ禍の影響で「働く実態にどのような変化があったか」を聞いたところ、調査対象のほとんどの国・地域で「テレワークが増えた」「所得が減少した」などが挙げられました。なお、日本では「将来のキャリアに関する不安が増加した」(6.9%)、「仕事の生産性が下がった」(8.1%)が18カ国・地域の中で最も低くなっていたそうです。
また、「働く意識の変化」については、「現在の会社で安定して働き続けたい」(34.1%)、「仕事の生産性を上げたい」(29.2%)、「業務のデジタル化を進めたい」(27.5%)が上位に。
国・地域別にみると、「現在の会社で安定して働き続けたい」は、すべての国・地域でトップ3に入っていました。「業務のデジタル化を進めたい」は、「タイ」(36.6%)、「シンガポール」(35.0%)、「韓国」(34.9%)で高くなっていました。
なお、日本では「労働時間を減らしたい」(33.9%)、「副業・兼業を行いたい」(28.8%)という意識が他国・地域に比べて高かった一方で、「独立・起業したい」(11.6%)、「業務のデジタル化を進めたい」(21.2%)という意識は低い傾向だったそうです。
次に、職場における「女性」「若手」「シニア層」「人種的・民族的マイノリティ」「LGBTQ」「移民や外国人労働者」の働きやすさを聞いたところ、「日本」はいずれも全体平均点を下回りました。ただし、「シニア層」の働きやすさは、全体平均の3.7に対し、「日本」は3.6に迫っており、「若手」の働きやすさのスコア(3.4)を上回っていたといいます。
「働いてみたい国・地域」の1位は「アメリカ」
続いて、「働いてみたい国・地域」を聞いたところ、全体では「アメリカ」(30.2%)が1位に。次いで「日本」(26.5%)、「英国」(22.5%)、「カナダ」(21.2%)、「シンガポール」(20.7%)と続きました。
ちなみに、東南アジアの「タイ」「フィリピン」「インドネシア」「マレーシア」「ベトナム」「台湾」「香港」では「日本」は働いてみたい国・地域の上位に挙がっているものの、2019年の調査と比べると、「タイ」(58.1%→46.6%)、「ベトナム」(61.1%→45.8%)、「台湾」(43.6%→28.5%)では、日本を希望する割合が10pt以上低下していたそうです。
なお、「日本」では、2022年調査でも2019 年調査でも「働きたい地域はない(自国のみで働きたい)」(47.2%)と回答した人が他国・地域に比べ最も高くなっていたといいます。
次に、「今後の勤続に関する意向」を聞いたところ、71.2%の人が「現在の勤務先で継続して働きたい」と回答。国・地域別でみると、「インド」(88.5%)と「中国」(85.7%)で多かった一方で、「日本」(56.0%)は最も少なかったそうです。
また、一般社員・従業員に対し、現在の勤務先で「管理職になりたいですか」と聞いたところ、管理職になりたい割合が多い順に「インド」(90.5%)、「ベトナム」(87.8%)、「フィリピン」(80.6%)という結果になった一方で、「日本」(19.8%)は最下位だったそうです。
最後に、「他の会社に転職したいですか」と聞いたところ、全体の35.2%が「転職したい」と回答。国・地域別でみると、最も多いのは「インド」(56.8%)、最も少ないのは「インドネシア」(20.2%)でした。なお、「日本」は25.9%で2番目に少なかったそうです。
また、「独立・起業したい」と回答した人は、全体の35.1%。国・地域別でみると、多い順に「インド」(57.9%)、「インドネシア」(52.1%)、「フィリピン」(43.8%)と続き、最も少なかったのは「日本」(20.0%)だったそうです。
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調査を実施した同社は「就労先として『日本』や『日本企業』を選択する割合は、2019年調査時よりも低下している傾向が確認された。深刻な少子化・労働力不足を背景に、外国人材への期待が寄せられる日本にとって憂慮すべき結果と言えよう。個人の働き方や価値観の多様化が進む中、現状のままでは優秀な外国人材の獲得はますます困難を極めることが予想される」と述べています。
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【出典】
▽パーソル総合研究所