東京・築地本願寺はなぜスマホアプリを作ったのか 背景にあったのは「少数派」意識?

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 東京・築地本願寺が今年6月にスマートフォンアプリをリリースしました。お寺が作ったアプリはどんなものなのか。なぜお寺がアプリを作成したのか。背景には新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で役立ちたいという思いがあるそうです。さらには、そもそも「築地本願寺=少数派」という意識があるようです。どういうことなのか、築地本願寺に聞きました。

 築地本願寺は西本願寺(京都市下京区)を本山とする浄土真宗本願寺派の首都圏の拠点寺院です。銀座エリアからほど近く、建築家・伊東忠太(1867~1954年)が手がけた斬新なデザインの寺院として知られています。

 築地本願寺がリリースしたのは「築地本願寺公式アプリ」です。アンドロイド、iOSともに対応しています。アプリを開くと下に「ホーム」を含め五つのタブがあります。右から順に「おてLIVE」「寺マガ」「お悩み僧談」「会員証」「ホーム」のタブが表示されます。

 「おてLIVE」を押すとYouTubeの築地本願寺チャンネルを見ることができ、本堂内の様子をライブ配信で見られます。

 続いての「寺マガ」はエッセイスト酒井順子さんのエッセーやお坊さんに関するコラムを掲載。「お悩み僧談」はさまざまな相談や悩み事に僧侶が応えたQ&Aが載っています。そして会員証は築地本願寺の会員制サービス「築地本願寺俱楽部」のデジタル会員証になっています。

 さらに午前7時と午後4時には「お勤めが始まります。おてLIVEからご覧ください」とプッシュ通知がアプリ登録者に送られ、本堂で行われる法要をYouTubeで見るよう登録者に促します。

 さて、築地本願寺はなぜ、このようなアプリを開発したのでしょうか。築地本願寺の実務ナンバー2の東森尚人副宗務長(53)に聞きました。東森さんはその理由を「お悩みに応えるため」だったと話します。

 コロナ禍となって以降、さまざまな悩み事や苦悩を抱える人が多くいます。築地本願寺はお寺に来て心を落ち着けてもらったり、法話に耳を傾けてもらったりする取り組みを実施。さらには本堂内に相談ブースを設けるなどして僧侶が相談にのっているそうです。

 依然、新型コロナウイルスの脅威が残る中、少しでも心を安らかにしてもらおうとつくったのがアプリでした。「おてLIVE」を押すと、どこでも画面を通して築地本願寺本堂内の荘厳な雰囲気を味わうことができます。さらに「お悩み僧談」にはさまざまな種類の悩み事と僧侶による答えが載っています。

 お悩み僧談のコーナーには「お数珠ですが普段から持ち歩いて良いものですか?」「娘二人に仏教を教えたい」といったお坊さんが得意そうな質問から「コロナ禍で仕事を失い落ち込んでいます」「旦那と仲の良い女性がいます」などの踏み込んだ相談も含め幅広いジャンルの「Q&A」が掲載されています。

 アプリは10月下旬時点で約7200件のダウンロードがありました。築地本願寺が行うYouTubeチャンネルのライブ中継の視聴者もアプリ経由の訪問者が増えたそうです。

 ここでもう一つの疑問が浮かびます。築地本願寺は東京の真ん中に大きな境内地を持ちながら、なぜここまでアプリを開発し、人々の悩みに懸命に答えようとしているのでしょうか。

 「私たちは東京では少数派なので目立たないとだめなんです」と東森さんはいいます。浄土真宗本願寺派は全国に1万カ所以上のお寺がありますが、同派の定義する関東圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城、静岡、山梨の各県)には、およそ4%にあたる約460カ所のお寺しかないそうです。このため、少しでも築地本願寺とご縁を結んでもらう人を増やそうという考えがあります。

 東森さんは「今後はダウンロードしていただいた方、ユーザーの方に、このアプリは必要だねと思ってもらえるように努力を続けていきます」と話します。お寺のアプリの今後に注目です。

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