トラブルを乗り越え、有名ホストクラブ「大阪男塾」が”実話”映画を制作したワケ 手がけたのは「失楽園」の花堂監督

山本 智行 山本 智行

 実在のホストクラブを舞台にした青春群像劇「大阪男塾・炸 NANIWA TENKO MORI」が完成し、1日にお披露目された。塾長・拓真(39)と現役ホストのスター☆HIDE様によるダブル主演。ともに俳優初体験ながらホストの実情を熱演している。監督・脚本はテレビドラマ「愛の嵐」「失楽園」や映画「羊のうた」「あなたを忘れない」などを手がけた花堂純次。これを観れば、ホストの真実が分かる!?

 大阪・ミナミの人気ホストクラブがホストクラブを舞台に、その表と裏を余すところなく描いた映画をつくる。そんな驚きの企画が持ち上がったのは昨年3月のこと。コロナ禍で飲食業界、映像業界が大きな打撃を受ける中、大阪の夜の街をもう一度元気にしたいという思いからだった。

 そこで「大阪男塾」として何ができるか。出した答えが映画という形にして、ホストという仕事、ホストの生き様を伝えることだった。塾長・拓真さんが言う。

 「大阪のエンタメ業界は元気をなくし、映画やドラマ制作の灯が消えかけていると聞きました。それなら広告トラックを走らせて宣伝するのもいいけれど、思い切って映画をつくって、自分たちの仕事とか、存在意義みたいなものを知ってもらった方がいいと考えたんです」

 大きな予算はかけられないこともあり、主演は拓真さん(リュウジ役)と現役ホストのスター☆HIDE様(ノブナガ役)が務めた。ともに芝居を演じるのは初めてだったそうで、花堂監督からは2カ月にわたって厳しい演技指導が続いた。その間、監督自身はホストとホストを取り巻く環境について丹念に聞き取り調査。これまでにないような「実話」をベースにしたオリジナル作品ができあがった。拓真さんが続ける。

 「一般的にホストは良く思われていないことも分かっていますし、正直いまでも好きになれない面もあります。しかし、その一方で男同士、ナンバーワンを目指して競い合う中で学べることも多々あった。だから続けられたと思う」

 そもそも、ホストクラブというのは和製英語で、諸外国にはほとんどない日本独特のシステムとして誕生し、すでに50年。ホストと呼ばれる男性従業員が飲食や会話で女性客をもてなす接客業とされる。

 それゆえに、ある意味で人生の縮図のような場所。映画の解説にもあるように、そこには「金と色恋、刹那の喜びと悲しみ、孤独と貧困と飢え、果てしのない欲望と見果てぬ夢、成功と挫折。そして親子、夫婦、友情と裏切り」など、ありとあらゆる人間模様が繰り広げられている。

 実際のあらすじは、こんな感じだ。ある夜、大阪トップのホストクラブ「大阪男塾」が仮面をした複数の男たちに襲われ、現金2000万円を強奪される。これでは給料が滞ってしまい、たちまち店の求心力が失われてしまう大ピンチ。その日、現金支給の流れを知る内部の犯行か。果たして、事件の背後には半グレ集団の暗躍があり、スーパーホスト・れんが刺客として東京から送り込まれるのだった…。

 クランクアップは昨年11月。実際、撮影が進んで行く中、同時進行で制作費の踏み倒しや、トップホストの引き抜きなど、筋書きのないトラブルも発生した。しかし、それが映画の中に組み込まれ、よりリアリティーさを増したともいう。

 監督・脚本を務めた花堂さんは人々の機微や業をとらえた作品に定評がある。日大在学中から助監督として活動し、テレビドラマ「愛の嵐」でデビューすると、その後は「失楽園」「永遠の仔」など数多くのドラマの演出を手がけた。2001年に「羊のうた」で映画デビューし「夢追いかけて」「不良少年の夢」「あなたを忘れない」などのメガホンを取った。

 特にマイノリティーにスポットを当てた作品は秀逸。主役の1人で、主題歌「世界のカタスミ」も歌うスター☆HIDE様も「映画の中の僕はひたすら走っているだけですが、詐欺師としてスタートし、人生の崖っぷちに立たされた人間がどうなっていくのか。これ以上言うとネタバレになってしまいますが、泥くさく、夢を追いかけて行く姿を楽しみにしてください」と話す。

 映画は12月2日から15日まで花堂監督の故郷でもある宮崎市の宮崎キネマ館で先行公開され、来年早々に大阪での一般公開を予定している。これに先立ち「大阪男塾」ではクラウドファンディングを実施予定。また今回の作品はシリーズ化されることも決まっており、今後の展開も楽しみだ。

 「奪うんやない、与えるんがホストや」というのが、この映画のメッセージ。塾長の拓真さんは「この世界はドロドロしているかもしれませんが、映画の中のリュウジのように、どんなことが起こっても負けずに正義を貫いていきたい」と話し、ホストの心構えとして「座った女性に対して価値を与えられる存在。夢を壊さないこと」を挙げた。

◇映画「大阪男塾・炸 NANIWA TENKO MORI」
問い合わせ先の公式LINE@osakaotokojukusaku

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