コンビニのレジ前でコワモテ男性と高齢女性がラップバトルをくり広げるCM作品が話題です。
高齢女性がレジのお会計に手間取るシーンから始まります。小銭入れの中を指でかき混ぜながら「ごめんなさいね、遅くてね。5円がちょっと…あれ…」。列の中のコワモテ男性の靴音が「タン!タン!タン!タン!」。場に緊張が走った次の瞬間、男性の口から出た言葉は「♪Yo!もしかして 焦ってんのか おばーさん 誰も怒ってなんかない アンタのペースでいいんだ 何も気にすんな 自分らしく堂々と生きるんだ」。高齢女性は「アタシも反省 見た目で判断」。最後にはレジ店員の女性も加わり歌い上げます。「たたくより、たたえあおう」。
東急エージェンシー関西支社が制作したCM作品「寛容ラップ」。ACジャパンの2022年度全国キャンペーン「不寛容な時代~現代社会の公共マナー」を象徴する作品として、全国の広告会社が提案した企画の中から選ばれました。
制作者「ディスらないラップバトル」
CM制作の陣頭指揮をとった、東急エージェンシー関西支社クリエイティブディレクターの森井聖浩さんに聞きました。
──ストーリーを思いついた経緯は。
「キーメッセージ『たたくより、たたえ合おう』を軸に、どのような設定・物語を描いていければ、このキーメッセージに共感を生むか、メンバー全員でブラッシュアップしていきました。そこで生まれたアイデアが『ディスらないラップバトル』でした。誰もが一度は経験したことがある“あるある出来事”を舞台に描くことで、幅広い世代が共感してくれるCMになると判断し『寛容ラップ』が生まれました」
──オンエア後、思いがけない発見や予想外の反応は。
「TV離れしていると言われている若者たちが、SNSで拡散され、『CM見たい!』『CM見れた!』と言ってくれていることや、60秒バージョンを見て『実はメッセージが深い!』『平和な世界はこういう小さなことから始まる!』など、僕らが考えた意図や狙いを言ってくれていることです」
──CMが大きな反響を生んでいます。率直なご感想は。
「反響の大きさはスタッフみんな想像以上でしたので驚いています。ネット上のコメントがほとんどポジティブコメントなのでとてもうれしい限りです」
オンエア後ネットざわめく「呂布カルマじゃね?」
コワモテ男性に扮するのは人気ラッパーの呂布(りょふ)カルマさん。7月1日からテレビでのオンエアが始まると、SNS上には「ACのCM、呂布カルマじゃね?」「呂布カルマ、ACジャパンのCM出てるの素敵」「呂布さんCMまさかのAC」「呂布さんアイスをマイクにしてるのかわいい」「ACなのに面白すぎ」などの声が上がり、Yahoo急上昇ワードやTwitterのトレンドワードには「ACジャパン」や「呂布カルマ」、「寛容ラップ」がランクインしました。
CMで呂布さんの存在を知った人も多く、7月24日にはフジテレビ系「ワイドナショー」にコメンテーターとして出演。「呂布カルマって誰?と思ったらACのお兄さんか」というつぶやきもあるほど、知名度は鰻登りです。
同CMは手話と字幕入り。SNSでは「手話ラップすごい」「手話の人、最高」「手話ぴったり」など、手話でラップを表現する技にも驚きの声が広がりました。手話通訳を務めたのは国立障害者リハビリテーションセンター学院専任教官で、「NHK手話ニュース845」手話キャスターとしても活躍する木村晴美さん。CMは2023年6月30日まで放送されるので、木村さんの手話ラップにもぜひ注目してみてはいかがでしょうか。