ドラマ化された人気漫画「推し武道」の聖地巡礼 鮭パフェに絶句、恐竜のオブジェに興奮 岡山のご当地アイドルとドルオタ気分で巡ってみた

山陽新聞社 山陽新聞社

 岡山県で活動するアイドルグループと、そのファンたちを描いた人気漫画「推しが武道館いってくれたら死ぬ」。JR岡山駅前の桃太郎像など、作品には県民なじみのスポットが多く登場する。10月から始まったテレビドラマでは、県内がロケ地になっており、ますます「推し武道」旋風が巻き起こりそうだ。どうせなら「ドルオタ(=アイドルオタク)」気分でゆかりの地を巡りたい―。そこで、岡山のご当地アイドルグループのメンバーと一緒に、聖地巡礼の旅に出た。

 「推し武道」は、7人組のマイナー地下アイドル「ChamJam(チャムジャム)」の人気最下位メンバー・市井舞菜の熱狂的ファン・えりぴよが、全ての時間とお金を捧げて応援する姿をコミカルに描いている。手掛けたのは、倉敷市出身の漫画家・平尾アウリさんだ。

 今回の旅に付き合ってもらったのは、岡山のご当地アイドルグループ「Sha☆in(シャイン)」の芽叶あかねちゃん(19)。かわいらしいステージ衣装で来てくれた。「今日はよろしくお願いします」と、記者に深々とおじぎをしてくれる礼儀正しい女の子だ。まずはJR岡山駅前でパシャリ。桃太郎像や岡山駅前商店街の桃のオブジェ、路面電車の岡山駅前電停は作品に登場するスポットだ。 

 この日は10月だというのに、汗ばむほどの暑さ。それでも、笑顔を絶やさず、いろいろなポーズのリクエストに応じてくれるあかねちゃんにプロ意識の高さを感じた。

 次に向かったのは岡山市中心部の西川緑道公園。ドラマでは主人公のえりぴよ(松村沙友理さん)と、のちに推しとなる市井舞菜(伊礼姫奈さん)の出会いのシーンが撮影された。舞菜からライブのチラシを受け取るえりぴよを再現してみた。あかねちゃんから受け取ったのは、「おかやまマラソン」のチラシだったが、「沿道に行ってみよう」と思えた。

 表町商店街(岡山市北区表町)は複数のスポットが登場する。桃太郎大通りに近い時計台前は、えりぴよが初めて舞菜のライブを見る場面のドラマ撮影が行われた。100均で初めて買った光る棒(ケミカルライト)を手に、記者も応援。こつは意中のアイドルのハートを射抜くように振ることと聞いて、必死でエールを送った。

 時計台から南に数十メートルの場所にある恐竜のオブジェは、ドラマで舞菜オタとなったえりぴよがジャージ姿でポーズを決めるシーンに使われており、一押し撮影スポット。あかねちゃんにも同じポーズをとってもらった。

 オランダ通り沿いにあるメイドカフェ「しゃるろっと」(同表町)は、作品に登場する「鮭パフェ」(850円)がある。舞菜のメンバーカラー・サーモンピンクに合わせたもの。一度食べたことがあるというあかねちゃんは「忘れられない味だった。定期的に食べたくなる」と語る。記者も勇気を振り絞り、ひと口。アイスの甘さと焼き鮭のしょっぱさ。塩キャラメルのようなものと捉えればよいのだろうか。とにかく白米が食べたくなった。

 「しゃるろっと」と推し武道のつながりはパフェだけではない。オープン当時のスタッフが作者の平尾さんと知り合いだった縁から、看板のキャラクターを描いてもらっているのだ。店内にはほかにも平尾さんのイラストがあるので、ぜひチェックしてもらいたい。

 ドラマのエンディングで登場する石山公園(同石関町)も押さえたい場所だ。旭川の水面を渡る風が心地よく、岡山城や月見橋も望める。

 実はあかねちゃんが所属する「Sha☆in」の専用劇場(同内山下)も、「ChamJam」の劇場としてドラマに登場。入口はドラマ仕様のまま「MKキャンディスタジオ」と書かれている。入口で写真を撮っていた「推し武道」ファンの男性(22)=玉野市=は「自分もオタクなので塩対応された時のせつなさや、推しにしっかり貢ぐところなど、主人公の気持ちがよく分かる」と魅力を語り、「作品とともに、岡山が聖地巡礼でもっと盛り上がれば」と期待する。

 アイドル側からだと作品はどう映るのだろうか。あかねちゃんは「アイドルとファンが互いを思い合っているのが素敵だと思う。ChamJamのメンバーが成長する姿も刺激になるし、『私たちもいつか武道館でライブしたいね』とメンバーと話しています」とほほ笑む。

  取材が終わり、雑談をしていたところ、あかねちゃんが最近、大学の授業で取り組んだ陶芸の話題に。「私、忍者が好きなんです」。そう言って見せてくれたスマホの写真には、手裏剣の形をした小皿が写っていた。「忍者?手裏剣?」と思いつつ、その可愛らしさに思わず胸がキュンとした。「推し武道」の道は、こうして開かれるのかもしれない。

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